「超・営業力」特集:
「営業の成績がなかなか伸びないなあ」「自社の商品が売れないよ」といった悩みを抱えている人も多いのでは。ビジネス書を読んだり、セミナーに出席したり、なんとかいまの立場から抜け出そうと試みるものの、うまくいかない。
では「一流」と呼ばれている営業担当者は“ひよっこ”のとき、どういったところに着目し、どのようにして成長してきたのか。本特集はそのきっかけに迫り、二流から一流になるためのヒントを探る。
高級な輸入車が並ぶ、洗練されたショールーム――。そこで活躍するトップセールスパーソンといえば、言葉巧みに商談を進める、いかにも“やり手”というイメージがないだろうか。
独アウディの国内直系ディーラー、アウディジャパン販売で活躍する平木孝佳さんは、そんなイメージからはギャップがある。穏やかで優しそうな笑顔が印象的なセールスマンだ。同社の中でも最大規模を誇る店舗「アウディみなとみらい」(横浜市)に所属し、2013年の入社以来300台以上を販売。17年は社内のセールス約120人の中で2番目の成績を挙げた。
平木さんはどのようにしてトップクラスまで上り詰めたのだろうか。穏やかな笑顔の裏には、輸入車、そしてアウディに対する熱い愛情があった。
年下の先輩を「手本」に
平木さんがアウディジャパン販売に入社したのは13年8月。それまでは、アウディの競合となる独高級車ディーラーで約10年間働いていた。社内トップの成績を挙げたこともある。
輸入車のセールスマンになったのは25歳のときだった。新卒で入社した商社からの転職。そのきっかけは、商社の業務で輸入車を運転する機会があり、その運転感覚に“ひとめぼれ”したことだ。「イメージ通りに動かせる、クルマとの一体感。地面に吸い付いて走るような感覚。国産車しか運転したことがなかったので、衝撃を受けました」と振り返る。
営業経験はなかった。それでも、「このクルマなら、自信を持って営業できる。運転の楽しさを心の底から伝えれば、きっと売れるだろう」と転職を決意。輸入車のセールスマンになった。
事務職からセールスへ、「180度違う」世界に飛び込んだ平木さん。転職して3年ほどは、社内でも目立つ存在ではなかった。販売成績は真ん中ぐらいだった。
転機が訪れたのは3年目。新しく着任した上司がきっかけだった。その上司は「お前がトップになれないはずがない」「もっと売れるぞ」と、厳しくも温かい言葉をかけてくれた。平木さんは、仕事に厳しい上司の下で働くことを「チャンス」と捉えた。「本気で必死に頑張ろう。ここで花が咲かなければ、次(の就職先)を考えよう、と思うくらい、スイッチが入りました」
とはいっても、特別なことをいきなり始めたわけではない。決して安くはない商品を、信頼して買ってもらうためには、基本的な所作が何よりも大切。それを身に付けるために手本にしたのは、同じ店で活躍していた3歳年下のトップセールスマンだった。「話し方や立ち振る舞い、お客さまを訪問するタイミングなど、プライドを捨ててまねをしました」。自分が話しすぎるのではなく、相手の話に耳を傾けること、セールスマンにとって「生命線」ともいえる電話連絡を丁寧にすることなどを身に付けていった。
その成果は販売成績に表れた。その年、それまでの2倍に迫る台数を販売。「やればできる、という自信になりました」。セールスの成績は、年が変わればリセットされる。経験や年齢に関係なく、ゼロから平等にチャンスが与えられる。平木さんはそう考えている。「過去の自分をリセットして取り組める。それができる仕事なので、頑張れました」と振り返る。
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