三菱東京UFJ銀行はこのほど、独自のデジタル通貨「MUFGコイン」のAPIを活用した新サービスのアイデアを競うハッカソンを開いた。MUFGコインのシステム開発と並行して、普及につながる新サービスの創出を目指し、ベンチャー企業などから広くアイデアを募集。三菱東京UFJ銀行の亀澤宏規さん(取締役常務執行役員)は「単なるお祭りにはしたくない。優れたアイデアは事業化を検討する」と本気だ。
MUFGコインは、取引記録をP2P方式の分散データベースで管理する「ブロックチェーン」を利用し、1コイン=1円の価値を持つ。リアルタイムで取引でき、小数点以下の単位を活用した決済も検討している。データの改ざんが難しいブロックチェーン技術の特性を生かし、あらかじめ定めた条件に基づき、取引や契約を自動化するスマートコントラクトも活用する考えだ。2017年5月から同行員向けに試験導入している。
一般への提供に向け、決済手段にとどまらないサービスのアイデアを募る。ハッカソンには50社が応募し、審査を通過した9チームが参加、成果を発表した。
大賞を受賞したチーム「$NYAON」は、「五輪のマイナー競技の報奨金が安い」という問題を挙げ、アスリートなどへ寄付できるサービスを考案。応援したい人が現金をMUFGコインに変えて寄付、総額が目標額を超えると、協会などへ支払われる仕組みを披露した。スマートコントラクトを活用し、サービス運営者が改ざんできず、水増しや中抜きのない寄付サービスを提案する。
この他、通勤・通学時の混雑を緩和するため、ピークの時間帯を避けた人が鉄道会社からMUFGコインを受け取れるサービスや、企業が学生に「TOEIC 800点以上」などの課題を与え、達成すると学費分のMUFGコインを提供、優れた人材獲得につなげる――というアイデアが出た。
同行の亀澤さんは「まずは収益化だけではなくサービスを発想するところから始めたい」と意図を説明。既存の電子マネーなどとは違い、ブロックチェーン技術を活用した「新しい体験、世界観の提供を考えている」と強調した。
同様の取り組みは、みずほ銀行の「Jコイン」(仮称)など競合も始めている。亀澤さんは、利用方法が煩雑化しないように「(Jコインとは)社会プラットフォーム部分は無駄な競争は避け、統一したほうがいいなど、共同で取り組む部分を考えたい。サービスの部分は競争すればいいし、一緒にできる部分は協力したい」と話した。
一方、MUFGコインは、リアルタイムでの取引への対応をうたうが、仮想通貨「イーサリアム」などでは取引量の増加に伴い、手数料が高騰するなどの課題を抱えている。亀澤さんは「先にサービスレベルの議論があり、取引件数が増えるとそうした議論も出てくる」としたが、現時点では「具体的な方策はない」とするにとどめた。
MUFGコインの一般向け提供は18年度中を予定しているが、亀澤さんは「(今回のハッカソンなどで)サービスに広がりが出るので、(時期を早める、遅らせる含め)スケジュールは考えたい」としている。
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