2月27〜28日の2日間に渡って開催されたイベント「CNET Japan Live 2018 -AI時代の新ビジネスコミュニケーション-」。2日目にはヤフーの講演が行われ、社内体制の変更も含めた「データ利活用」への取り組みと、同社のビッグデータを他社と連携する新たなプロジェクトについての詳細が語られた。
ヤフー株式会社 執行役員 データ&サイエンスソリューション統括本部長 チーフデータオフィサー(CDO)佐々木潔氏
500人のデータ人材がユーザー行動を分析
登壇したのは、ヤフー執行役員でチーフデータオフィサー(CDO)の肩書きをもつ佐々木潔氏。あまり聞き慣れない「チーフデータオフィサー(CDO)」という言葉だが、同氏によると欧米企業では一般的になりつつあり、大手企業(時価総額上位100社)に限ってみても、欧州、米国ともにそれぞれ30社近くがチーフデータオフィサー(CDO)を抱えているとのこと。一方、日本企業においてはわずか2社に留まっており、国内での認知度はまだまだ低いといえる。
CDOは欧米では一般的になりつつある
ヤフーが会社組織としてCDOというポジションを設定したのは2017年のこと。同社に500人在籍するというデータ人材は、担当するサービスなどに合わせて多数の小グループに分けられている。また、サービスを運営する事業部門ごとにデータ責任者となるデータディレクター(DD)が配置されている。CDOはDDを束ねる役割をもち、現時点ではデータ部門のトップも兼ねている。
こうした“データ指向”の社内体制は、同社がデータとそれを有効活用することの重要性を認識していることに他ならない。以前はウェブサイトのアクセス数、リンクのクリック数、クリックした場所といった単純なデータしか収集していなかったそうだが、近年は画面スクロールの仕方を含め、どんなユーザーが、どういったタイミングで、どのように行動しているか、詳細な情報が得られるようになってきているという。「何を求めているのか、あるいは求めていないのか、ユーザーの感情もわかるようになった」と話し、「ユーザー1人あたりの取れるデータ量は、5年前の20倍になっている」と明かす。
CDOを筆頭にしたデータ組織。部門ごとにDDを設置
2013年当時と比較して、データ量は20倍になった
ヤフーが展開するサービスは100を超え、月間のアクティブユーザーID数は4000万、ページビューは700億、ユーザーのアクション(シグナル)数に至っては1兆に達する。そんな規模のサービス上で収集されるデータはまさに膨大だろう。かつて、それらのデータはサービスごとで収集した後、そのサービス内で活用されるだけだったことから、数年前よりそれらのデータを横串で分析、活用できるよう改善を進めてきたという。もしサーチエンジンでのユーザー行動と「ヤフオク!」や「ヤフーショッピング」でのユーザー行動とを合わせて分析できれば、ユーザーの嗜好をより正確に把握でき、精度の高いレコメンデーションにもつなげられるからだ。
そこで同社は2015年、それまで各サービスの担当部署ごとに設置していたデータ部門を、全サービス共通の大きなデータ統括部門に改めた。先述の通り、2017年にはCDOを設け、サービスにまたがるデータ分析を効率的に行えるようにした。
「まだ完璧にできているわけではない」としながらも、体制変更によってサービス間で「データをつないでいくこと」ができ、「ユーザーの行動を多面的、立体的にとらえられるようになった」と佐々木氏。サービスごとのビッグデータをまとめて取り扱うことから、社内では「マルチビッグデータ」と呼び習わされているとのことだ。
企業の枠を超えて生産や物流でも「新たな価値」を
当初はサービス内で、次にサービスをまたいでデータの利活用を進めたヤフーは、2月6日、「AIを用いた企業間ビッグデータ連携の実証実験参画者募集」との発表を行い、ビッグデータを企業の枠を越えて提供する方針を公表した。過去の経験から、1つのサービス内ではなく、サービスをまたいでデータを活用した方が「新しいことがわかり、新たな価値が作れた」ことから、「企業の枠を越えた場合でも、同じように新たな価値を生み出せるはず」という期待の実現に向けたものだ。
たとえば、ヤフーのデータと、他の企業や自治体、研究機関のデータを組み合わせることで、「売上の向上、よりよいパブリックサービス、研究に発展につながるのではないか」と佐々木氏は語る。これまでも同社は、データを用いて「マーケティング領域で企業のビジネスをサポートしてきた」が、マーケティングだけでなく企画・開発、生産、物流といったバリューチェーン全体に活用することで、「もっといい物作り、サービス作りにつながる」と考えている。
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