2017年9月に発表され、7色のカラーリングで話題になったのがダイキン工業のエアコン「risora」(リソラ)だ。価格で選ばれることの多いエアコンにあって、ダイキンが積極的にカラー展開を行った理由は何か。2015年からダイキンのデザイン顧問を務めているプロダクトデザイナー、坂井直樹氏とリソラのデザイン責任者、関康一郎氏に話を聞いた。
多くのエアコンは壁と同じ白い外観をしている。室内で存在を主張せず、脇役に徹するためのカラーリングだ。「高級ホテルなどに行くと、エアコンを隠してあったりしますよね。人はエアコンが必要なのではなく、生み出す快適な空間が必要なだけなんですよ」と坂井氏は指摘する。一方でデザイナーとしては疑問も持ったという。「エアコンは隠さなきゃいけないほどのデザインなのでしょうか?」(坂井氏)
坂井氏といえば、四角いクルマが主流だった1980年代にレトロデザインの「Be-1」(日産自動車)コンセプトを打ち出し、その後の自動車デザインに多大な影響を与えたコプロダクトデザイナー。他にもオリンパスのコンパクトカメラ「O-product」(1988年)、外部デザインディレクターとしてau携帯電話のプロダクトデザインに携わるなど、数々のヒット商品を生み出してきた。しかし、これまでエアコンをデザインした経験はなかったという。
「携帯電話でもカメラでも車でも、デザインに関する考え方やアプローチは変わりません。人が快適に使えるとか、デザインを受け入れたくなるための“キーワード”さえクリアすれば、どんなジャンルのものでもデザインできます。エアコンは確かに主役になるような製品ではありませんが、隠さなければいけない製品でもありません。そうした部分を考慮してデザインするのは面白いなと思ったんです」(坂井氏)
2015年11月、坂井氏のデザイン顧問就任と同時期にダイキンは大阪に研究開発拠点「テクノロジー・イノベーションセンター」(以下、TIC)を開設した。同社が誇る空調技術を用い、新たな価値創出を目指すコア拠点であり、リソラはそのメッセージを背負って生み出された象徴的な商品といえる。
「リソラの企画が出てきたのはTICが設立された頃でした」と語るのは、デザイングループ責任者の関さん。「その頃、複数回のユーザー調査で『薄くスタイリッシュなエアコンが欲しい』という声が必ず挙がっていました。そこから『リソラ』の企画は始まりました」(関氏)
ダイキンは「UXシリーズ」という欧州デザインのマルチエアコンを逆輸入する形で販売しているが、「日本の家庭にはやや大きく、またマルチエアコン自体のニーズが少なかったので、販売台数はそこまで伸びませんでした。しかし、多くのメディアに取り上げられ、ユーザー調査の中でも『UXシリーズのようなスタイリッシュな普通のエアコンがあれば……』といった声が一定数あったので、坂井さんなどとも相談し、色で選べるエアコンがあってもいいと『リソラ』の開発が本格的にスタートしました」(関氏)
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