新しい「iPad」(9.7型)が発売された。最大の特徴は、約1年前に発売された前モデルから価格は据え置きながら、手書きができるスタイラスペン「Apple Pencil」に対応したこと。価格は3万7800円(税別、以下同)からと安く、Apple Pencilの利用シーンが格段に広がるだろう。
一方、これからiPad(タブレット)の購入を検討している人にとって気になるのが、よりスペックの高い「iPad Pro」と今回のiPadのどちらを買うべきか? という点だ。実機やスペックを見比べつつ、iPad(9.7型)とiPad Pro(10.5型)の違いをレポートしたい。
価格はiPadが3万7800円〜6万3800円、iPad Proが6万9800円〜12万3800円と大きな差があるが、ユーザー体験やスペック面で特に大きく違うのがディスプレイだ。サイズの違いに加え、ガラスと液晶の間にある空気層をなくした「フルラミネーションディスプレイ」、光の反射を抑えるコーティング(反射防止コーティング)、緑や赤をより鮮やかに表現できるP3の広色域ディスプレイ、周囲の光に合わせて色合いや明度を自動で調整する「True Tone」は、iPad Proのみが対応している。
ただ、フルラミネーションディスプレイ非対応については、思ったほど気にならないというのが正直なところ。確かに、iPadのディスプレイを間近からのぞき込むと空気層が見えるが、正面から見たり操作したりする分にはそれほど違和感は覚えない。iPadもRetinaディスプレイで、画素密度はiPad Proと同じ264ppi。写真や動画の精細さという点ではiPad Proと変わらない。
ディスプレイの色域は、確かに見比べるとiPad Proの方が緑や赤が鮮明に出ていて美しいが、iPadの画質が極端に劣るとは感じなかった。また、iPad ProでTrue Toneをオンにすると、やや赤みが強く出るのが気になった。
反射防止コーティングの差はやはり大きく、iPadでは、蛍光灯や太陽光などが強く反射する。同じ場所で1人で画面を見続ける分には、光が当たらない角度に固定すれば問題ないが、複数人で(いろいろな角度から)画面を見るときは、角度調整などが生じて少し不便に感じるかもしれない。
画面のリフレッシュレートは、iPad Proは従来の1秒あたり60回(60Hz)から120回(120Hz)に倍増しているが、iPadは60Hzのまま。ただ、これも個人的には数字ほどの差は感じない。例えばブラウジングする際、確かにiPad Proの方がスクロールしながらでも文字は見やすいが、文字を読むのは静止状態の方が多いので、60Hzでもそれほど気にならない。
Apple Pencilの書き味は、標準の「メモ」アプリやスクリーンショットで書き比べた限り、iPad Proとの違いはほとんど感じなかったが、サード−パーティーのお絵かきアプリ(今回試したのは「ibisPaint X」)だと、iPadはやや遅延があると感じた。アプリがiPadのタッチパネルに最適化されていない可能性もあり、今後のアップデートで改善されるかもしれない。ちなみにアップルによると、「iPad Proの方が高性能なチップ(プロセッサ)を搭載している分、追従性はProの方が良いので、緻密なイラストを描く場合はiPad Proの方が良いと感じる方もいらっしゃると思う」とのこと。
カメラはiPad Proから大きくスペックダウン。単に画素数が下がっただけでなく、アウトカメラは光学式手ブレ補正やフォトライトにも対応していない。タブレットでカメラをよく撮る人にはマイナスポイントだが、普段はスマートフォンのカメラを使っているという人にとっては大きな影響はないだろう。ちなみに、iPad Proでは出っ張っているカメラレンズは、iPadではフラットに収まっている。デザイン重視の人はiPadの方がいいかも?
内蔵スピーカーの数は、iPad Proの4つから2つにダウン。iPad Proのスピーカーは外付けのスピーカーがなくても十分と思えるほど音量が高く音質も良かった。手軽に音楽を楽しみたい人には残念な仕様といえる。
Touch IDはiPad Proのみ、より速く認証できる第2世代のセンサーを搭載しているが、iPadのTouch IDも認証で失敗したことはほぼなく、認証スピードもそれほど大きな差は感じなかった。
iPadはAppleの「Smart Keyboard」に対応しないという違いもあり、外出先でPCのようにキーボードを使いたい人は要注意。ただ、サードパーティーから販売されている市販のBluetoothキーボードもあるので、そちらで代替する手段もある。
プロセッサはiPad Proが「A10 X Fusion」、iPadが1つ前の世代となる「A10 Fusion」を搭載。A10 Fusionは「iPhone 7」と「iPhone 7 Plus」にも搭載されているので、iPhone 7/7 Plusと同等のパフォーマンスを備えているともいえる。参考までに、ベンチマークアプリ「AnTuTu Benchmark」(v6.3)でテストしたが、総合スコアはiPad Proが20万〜22万、iPadが17万台だった。特に「3D」の項目で差がついており、高負荷のゲームなどはiPad Proの方が向いているといえる。
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