2018年4月7日土曜日

さらばハッキントッシュ…。AppleがIntelプロセッサを廃止するとどんな影響があるの?


これはmacOSを揺るがす大きな変化になるかも…?

Bloomberg NewsのMark Gurman氏とIan King氏によると、これまで噂されていた通り、Apple(アップル)はIntel(インテル)プロセッサから自社製造のプロセッサに移行するようです。Appleは現在米国3位のコンピュータメーカーなので、Intelにとっての損失は膨大になるでしょう。それだけでなく、エンドユーザーにとっても大きな損失になる可能性があります。

Bloombergによれば、2020年までに全ての自社製コンピュータにAppleプロセッサを導入するというプロジェクトは、内部ではKalamata(カラマタ)と呼ばれているとのこと。また、この計画は全てのAppleデバイス(iPhone、iPad、Macなど)がお互いによりシームレスに連携するための大きな計画の一部のようです。

Intelを見捨ててMacBookをよりiOSに近づけるという噂は、これが初めてではありません。しかし、Gurman氏はAppleに有力な情報源を持っていることで有名で、信ぴょう性は高いと思われます。なので、AppleがIntelと袂を分かつ可能性は高く、そうなるとただでさえ悪いニュースのつづくIntelにとっては泣きっ面に蜂ということに。1月には、過去10年間生産してきた全てのプロセッサに共通のセキュリティ欠陥が見つかり、その直後にライバルであるAMDにCPUの分野で話題を独占されてしまいました。

またIntelは新しいプロセッサの発売に遅れが出ており、第8世代CPUのロールアウトが2017年の8月に始まって、現在でも続いています。しかし、代表的なタイプのCPU数種類がまだ発表されておらず、Appleに限らず、デスクトップやラップトップのメーカーはどこも困惑しているでしょう。もしIntelの開発が間に合わないなら、他を当たる可能性だってありえます。

間違いなくそれを期待しているAMDはアグレッシブにラインナップをロールアウトしており、今後数カ月で更に発表する予定です。Qualcommですら、Microsoftと共同でSnapdragonで動作するWindows 10ラップトップをプロデュースし、Intelを追走しています。

とはいえ、いくら悪いニュースがつづいても、Intel自体は生存できるでしょう。例えAppleがデスクトップやラップトップの全てからIntelプロセッサを追い出したとしても、ほかの部分にIntel製品はまだ使われています。じゃあ、CPUの変更という大きな変化は、Appleユーザにとってどんな影響があるのでしょう?

まず、将来的にHackintosh(ハッキントッシュ)の夢はなくなるでしょう。これは、macOSをインストールした自作PCのことです。Motorola製のPowerPCを使用していた2006年まではそもそも不可能でしたが、Appleがx86アーキテクチャを導入したことで、ちょっとした「ハッキング」を通じて、WindowsやLinuxのように自作PCにmacOSをインストールできるようになったのです。なぜハッキングかというと、ブートローダーやカーネル編集、カスタムのドライバ、そしてかなりの忍耐力を必要とするからです。また、この行為はmacOSライセンスの利用規約違反なので、Appleがその気になればいつでも利用不可にできてしまいます。

Macと同じOSのPCを半分ほどの値段で手に入れたい、より強力なPCでmacOSを動かしたい、ちょっとコーディングを勉強したい、ハッキントッシュはそんな願いに最適な手段でした。しかし、Intelプロセッサを採用しないとなると、x86アーキテクチャを採用することもなくなる(アーキテクチャを使用するにはライセンス料を払う必要がある)でしょうし、いずれはmacOSも対応しなくなるでしょう。これは、ハッキントッシュの死を意味します。同時にWindowsのデュアルブートもなくなる可能性があるので、アプリのクロスプラットフォーム開発も煩雑になるでしょう。

ハッキントッシュのコミュニティで著名な開発者であるtonymacx86さんは米Gizmodoに対し、「最低でも2020年まではx86アーキテクチャをサポートしないと、いま買われているラップトップの多くがダメになるし、ハッキントッシュのコミュニティには大きな痛手になる」とEメールでコメントしました。しかし、完全に絶望したわけでもなさそうで、「それがきっかけで、OSを対応させるようなプロジェクトのオープンソースコミュニティが立ち上げることも大いにあり得るよ」とのこと。

また、x86でないならどういったCPUを採用するのか、という疑問もあります。あまりパワーを必要としないiOS用モバイルCPUに関しては経験を積んできましたが、ラップトップやデスクトップなど、より複雑な作業を求められるCPUに関しては、デザインしたことも製造したこともありません。そういったCPUをデザインするのがどれだけ大変かは、最近のIntelやAMDを見れば明らかです。そこでもしAppleがしくじれば、同社のコンピュータ部門は壊滅的なダメージを受けることになります。

それを回避するには、2001年にMac OS 9からOS Xに移行して以来の、抜本的なリデザインが必要になるでしょう。それによってOSをよりiOSに近づけ、得体の知れないアプリを何十個も立ち上げておくのではなく、Appleのユニークなアーキテクチャに合わせてデザインされ、厳選されたアプリだけを使うようになるのかもしれません。

Appleの観点から言えばそれも理にかなっているし、Bloombergによれば、より広く利用されているiOSにmacOSを近づけるというより大きな計画の一部だそうです。ただ1つ留意しなければいけないのは、それが悪い結果を招きかねないということです。まず、iOSはアプリストア以外からアプリを入手するのが非常に困難です。更に、OSの根幹へのアクセスはAppleによって固く禁じられているので、今までデスクトップでは当たり前のように色々といじることができた、パワーユーザーにとっては戸惑う変化です。今でこそ、好みのEメールクライアントやウェブブラウザを指定するのも、隠されたファイルを表示したり、特定のホットキーを無効にするアプリをインストールのも簡単ですが、macOSがiOSのようになってはそうもいかないかもしれません。

しかし、実際のところどうなるかはまだ誰にも分かりません。米GizmodoがAppleとIntelにコメントを求めたところ、前者はコメント拒否し、後者は「クライアントに関する憶測にはコメントしません」とのこと。

個人的にハッキントッシュに興味はありませんが、今のmacOSの自由度が好きなので、iOSのようになってしまうのはなんともいえないですね…。


Image: Alex Cranz
Source: Bloomberg

Alex Cranz - Gizmodo US[原文
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