旅好きのカエルを旅に送り出し、のんびりと帰りを待つアプリです──これは、中国で大ヒットしている日本のスマートフォンゲーム「旅かえる」のアプリ説明文。パズルゲームのように一生懸命スマホ画面をたたいたりこすったりする必要はなく、ただのんびりとカエルの帰りを待つという一風変わったゲームだ。
開発したのは「ねこあつめ」でも話題を呼んだヒットポイント(開発拠点は愛知県と京都府)。ねこあつめは累計1900万ダウンロードを突破、旅かえるも中国を中心に大きくユーザー数を伸ばし、ねこあつめのダウンロード数を超えている。
ユーザーを放置するという独創的なゲームはどのように生まれたのか。とがったゲームを作るには、大企業にはできない少人数開発ならではの強みがあるという。
とがったゲームの作り方
「ネコたちを眺めて癒される」「旅好きのカエルが帰ってくるのをのんびり待つ」──こんな独創的なゲームはどのような環境で生まれたのか。
ヒットポイントは社員約20人の会社で、全員が開発に携わっているという。同社の高崎豊プロジェクトマネジャーは、「現場主義で動け、会社の構造に開発の邪魔をされない」と強みを語る。
ヒットポイントではメンバーを4チームに分け、それぞれが独自にプロジェクトを進行。スケジュールや収益などもチームごとにほぼ独立した形で見ているので「ある意味で放任だが、現場主義で動けるシステム」という。
そんな環境の中で重視しているのが(1)個人の得意分野を生かすこと、(2)自社タイトルを客観的に見てもらえる場を大切にすることだ。
膨大なリソースを持つ大企業だからこそ作れるゲームもあるが、ヒットポイントは「個人が持っているとがったものを表に出していくような形で作っていくこと」を意識しているという。
自社タイトルを客観的に見つめる場も大切だ。旅かえるの企画を始めたとき、アプリプラットフォームを展開するGoogleに意見を聞く機会があり、「カエルが何日も帰ってこないとアプリ不具合だと思われるんじゃないか」「ユーザーは不安になるかも」などの指摘をされた。それもあり、カエルの帰りを待っている間にユーザーができることを増やす方向で議論が進んでいった。
ねこあつめに続くようなアプリを、ということで生まれた旅かえる。「カエルがただ旅をするだけのゲーム、面白いんじゃないの」という提案から話が広がり、「プレイヤーに何かさせ続けるものではなく、日々ちょっとずつプレイするだけで進められるゲーム」にする方針をチーム内で決めていったという。
開発者の個性を出しつつ、客観的にゲームを見つめる。試行錯誤を繰り返し、旅かえるは企画から1年ほどで世に送り出された。
中国で大ヒットした理由
旅かえるは中国で大ヒットしている。iOSユーザーのシェアは、中国が95%、日本が1.5%、米国が0.7%ほどを占めるというからその差は圧倒的だ。SNSから口コミで火が付いたとされているが、高崎プロジェクトマネジャーは「明確な理由は分かりませんが」と前置きしつつ、こう説明する。
「中国では男性がしっかり作りこまれたスマホゲームで遊ぶ傾向があったが、最近は女性もスマホゲームで遊ぶようになってきた。そこにうまく女性でも気軽に遊べる旅かえるが受け入れられたのかなと思います」(高崎プロジェクトマネジャー)
ねこあつめも最初は韓国で火が付いたというが、いずれも現時点では日本語版のみの提供。GoogleのGoogle Play担当者によると、「(旅かえるをプレイするために)台湾や香港では翻訳アプリも合わせてダウンロードされていて、人気が高い」という。
「海外でのヒットは本当に予想外だった」と語る高崎プロジェクトマネジャーだが、ローカライズや各地域の観光地からの問い合わせは多く、「(海外展開に向けて)全然準備を整えていなかったのが歯がゆい」と話す。
「まずはカエルに日本全国を回らせたい」とし、日本語版の機能拡充やボリュームアップを図る考えだ。
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