2018年3月3日土曜日

[ITmedia News] 仮想通貨交換業者が新団体 登録16社が自主規制へ【質疑応答あり】

 仮想通貨交換業者16社が3月2日、新たな自主規制団体を設立することで合意したと発表した。コインチェックから巨額の仮想通貨「NEM」が流出し、利用者保護を求める声が強まる中、セキュリティや広告規制などで統一したルールを定める考え。「仮想通貨の利用者が信頼、安心して使える環境を早期に整える」としている。

photo bitFlyerの加納裕三代表取締役

 金融庁の登録を受けた、マネーパートナーズ、QUOINE、bitFlyer、ビットバンク、SBI バーチャル・カレンシーズ、GMOコイン、ビットトレード、BTCボックス、ビットポイントジャパン、DMM Bitcoin、ビットアルゴ取引所、エフ・ティ・ティ、BITOCEAN、フィスコ仮想通貨取引所、テックビューロ、Xtheta――の全16社。コインチェックなど登録申請中の“みなし業者”は含まない。

 新団体は、資金決済に関する法律(第87条)に基づく「認定自主規制協会」の認定取得を目指す。認定団体となれば「加盟団体に強制力を持った自主規制を行える」という。

 これまでは、マネーパートナーズなどが加盟する日本仮想通貨事業者協会(JCBA)と、bitFlyerなどが作る日本ブロックチェーン協会(JBA)という業界団体が、それぞれの加盟社向けに自主規制ガイドラインを定めていた。新団体はこれらとは別に設立する。

 新団体の会長にはマネーパートナーズの奥山泰全代表取締役が、副会長にはbitFlyerの加納裕三代表取締役が就任する見通し。奥山氏は「仮想通貨を信頼・安心して使える体制を整えるべく自主規制に取り組む」と話す。

 今後は、登録を目指す事業者も受け入れる体制を整える。現時点では、新協会の名称、所在地、設立時期、認定承認時期などは未定。

photo マネーパートナーズの奥山泰全代表取締役

質疑応答(一部抜粋)

――仮想通貨取引所の公共性をどう考えるか。

奥山:取り扱う仮想通貨は、現行法では届け出が必要。顧客への責任を果たすためには、取り扱う仮想通貨の内容をホワイトペーパーなどで説明する義務が生じる。当局の確認を得ながら、各社が取り扱う仮想通貨を考えている。

加納:仮想通貨であれば、何でも登録できるものではないと認識している。詐欺やユーザーにとってリスクが大きいものは排除すべきと考えている。

――これまで2つの団体は、折り合わなかったところがあると思うが、考え方の合意があったか。

奥山:2年弱、両団体で協議をしてきたが、ステークホルダーも考え方もすり合わせが必要な部分があった。コインチェックの事件が契機というわけではないが、自主規制・ガバナンスが求められる中、登録事業者の間で認定自主規制団体の登録を急ぐということで合意に至った。各社の足並み、目指すところをそろえていく。

加納:新団体であり、従来の2つの団体とは別に設立する。とはいえ、これまでの知見も生かしたい。

――折り合えなかった理由は。

加納:生い立ちや理念が異なった。業界が1つになっていくターニングポイントとして、業界の健全の発展、前向きなことを議論したい。

奥山:エンジニア出身だが、ブロックチェーンなど新しい技術について、どこまで規制対象に盛り込んでいくか、両者の間でバランスの観点が分かれていた。今回は登録を受けた仮想通貨交換業者の“箱”を作っていこうという試み。(bitFlyer側の)日本ブロックチェーン協会が持っている技術についても、知見の高さは認識している。従来の2団体は統一はせず、それぞれ存続するが、互いに知見を生かす部分もあると思う。

――設立のめどは。

加納:おおむね1カ月程度になると考えている。自主規制の策定、運用には何カ月かかかるとみている。

奥山:認定など手続きを何段階か踏む必要がある。急ぎ“箱作り”を進めていく。

――自主規制は何から取り組むのか。

奥山:内部管理から取り組む必要がある。取り扱う仮想通貨の種類、ICO、(Initial Coin Offering、新規コイン発行)、詐欺行為などについて説明するホワイトペーパーの整理。システム障害や入出金のトラブルなどへの対処も、どれも優先度が高いが急ぎながらしっかりと進めたい。

加納:セキュリティ、広告規制など、犯罪を防ぐ事柄については重点的に議論する必要があると感じている。

――無登録業者への対応は。

奥山:当団体は、登録している事業者が早急に集まり社団を結成した。みなし業者については、受け入れ体制を整えていきたい。無登録業者については何とも申し上げられない。

――2団体が存続する意味は。

奥山:ステークホルダーや考え方が異なる。新団体は、登録事業者による団体を目指す。残り2団体は、すり合わせができ次第、新団体側に“寄ってくる”と思っている。それぞれ特徴が異なり、日本ブロックチェーン協会はブロックチェーン技術に関する知見、日本仮想通貨事業者協会は会計や税務、法律などの知見を集約する場として提供してきた。役割を終えて消滅するなどは、現段階では議論する余地はないと思っている。

加納:統合の可能性も検討したが、時間的制約もある。まずは差し迫った課題を解決するために、新団体を作って一致団結することがスピーディーにできると考えた。

――今後、新たに業者を受け入れる場合、審査体制は。

奥山:認定自主規制団体は、当局の指導がなくとも新設の会社に対し、ある程度アドバイスと申しますか、サポートすることが業務に含まれている。そうした役割を担っていくことになると思う。正規の登録を受けた業者を正会員といいますか「1種会員」とし、みなし業者は「登録を取れるか、取れないか」で決着が着くと思うので、種別をしながら対応していく。

――新団体の人事体制は。

奥山:設立総会をもって決めることになるが、奥山が会長、加納が副会長となる予定。

――今後の方向性として、既存団体との連携は。

加納:未定だが、貢献できるところがあれば検討したい。他団体(ブロックチェーン推進協会など)は話はしていないが、協力できれば業界の発展につながると考えている。

――認定団体となると、具体的にどんなことができるか。

奥山:自主規制に対して強制力を持つ。勝手にではなく、加盟団体が違反した場合、罰則を科せる団体になりえる。独占禁止法と裏表の関係でもあり、必要以上に強制力を発揮する団体になってもよろしくない。バランスを考えたい。

――現状の仮想通貨業界をどのように捉えているか。

加納:私が初めて仮想通貨と出会ったのが2010年。当時と比べると様子は大きく変わり、多くの人が仮想通貨を認知・利用し、信頼される業界になることが求められている。昨今は残念な事件があり、信頼回復に努めたい。決済分野での応用やブロックチェーン技術そのものなど、可能性が残るものでもある。

奥山:仮想通貨とブロックチェーンは切り離せない。技術としてお金として、両面で発展していく必要がある。現時点ではいささか過剰投機、マネーゲームの側面があり、注意喚起も必要と考えている。仮想通貨は、次世代につながる技術だからこそ注目された。明るい将来のためにも、仮想通貨のフレームワークを作り上げ、利用者保護など、マーケットが資する環境を作らなければならない。

――コインチェック事件はハッキングが原因だった。そうしたトラブルに対し、新団体による自主規制の有効性はどれくらいあると考えているか

加納:全容が分かっていないため、どうすべきか対処ははっきりしていない。とはいえ、認定団体となれば、コールドウォレットやマルチシグの活用など運用も含め、セキュリティ基準を定められる。認定団体は権限も強く(各社の)セキュリティの技術を見ていくことになる。

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