3月2日から4日までの3日間、KDDI直営店の「au FUKUOKA」(福岡県福岡市中央区)で、起動しなくなったフィーチャーフォンを復活させ、写真などのデータを見られるようにするイベント「おもいでケータイ再起動」が開催されている。事前予約は必要なく当日参加OKで、au以外のキャリアのフィーチャーフォンも無料で“再起動”できる。受付は連日12〜18時。
待ち時間を短縮し、データ移行にも対応
使わなくなって放置していたために完全にバッテリーが放電し、起動しなくなった古いフィーチャーフォン。それを再起動できるようにするのが「おもいでケータイ再起動」イベントだ。スタッフが特別な機材を用いて電源を入れられるようにし、端末内に保存されている写真や動画、メールなどを閲覧できるようにしたうえで、復旧できたお気に入り写真を1枚だけプリントしてもらうことができる(すでに締め切られているが、事前応募することで写真を3枚までプリントしてもらえる)。
KDDI広報部 メディア開発グループの西原氏が、本社で「自分の古いフィーチャーフォンの電源を入れられるようにした時、とても面白かった」のをきっかけに始まったこの企画は、トライアルで実施したau SHINJUKUを含めると、au NAGOYA、au SENDAIに続いてこれが4回目。
au NAGOYAとau SENDAIのイベント参加者は合わせて250名ほどと盛況で、さらに今回のau FUKUOKAは、平日にもかかわらず初日最初の3時間で30名近くが来場し、過去最高の出足となった。事前応募も120名ほどの申し込みがあるため、開催期間中は多くの来場者が予想される。
「おもいでケータイ再起動」はトータルで4回目ということもあり、ノウハウも少しずつ貯まってきた。前回と比べオペレーション面で改善した部分があるだけでなく、新しい取り組みも始めている。
改善点については、「au NAGOYAのときは長い時間お待たせしてしまうことがあった」ことから、スムーズに案内できるよう検証手順を整理。最初にバッテリーテスターを使って端末の電池パックの状態を素早くチェックし、正常に充電もしくは起動できそうであれば席を移動して通常の充電器を接続し起動を試みる、という流れになった。充電器の数も前回より増やしたことで、より多くの端末に同時並行で対応できるようにしている。au NAGOYAの時は1人の対応に30分前後かかっていたのを、15分ほどにまで短縮できているという。
また、過去のイベント参加者からの要望を受け、今回、フィーチャーフォンから現在使っているスマートフォンへのデータ移行にも対応するようにした。フィーチャーフォンのデータをいったんSDカードなどに書き出し、Android/iOS端末へコピーする形。データ移行し、不要になったフィーチャーフォンは回収され、リサイクルに回される。ただし、あまりに古いフォーマットの動画などは一部の環境でコピーできない場合もある。古いフィーチャーフォンでいいから見られるようにしておきたい、などの理由でリサイクルを希望しないときは、端末を持ち帰ることも可能だ。
子供も大人も昔を振り返る。懐かしさだけでなく戸惑いも
再起動してデータを閲覧できるようになる“成功率”は、これまでのところ平均して7割前後。今回のau FUKUOKAの初日の様子を見る限りでも、おおよそ同じような確率で成功しているようだった。一度に複数台を持ち込む参加者が比較的多く、だいたいが10年以上前に購入している端末。今回、取材中に再起動を試していた最も古いものは2000年頃の端末で、しかもしっかり起動に成功していた。
ある赤ちゃん連れの女性は、4台持ち込んだうち3台の再起動に成功。最も古い端末1台のみが再起動できなかったために、狙っていた「ペットの犬が生まれたばかりの頃の写真」は残念ながら取り出せなかったが、「少し成長した頃の写真や動画を見つけることはできた」と笑顔で話した。
中学生の子供と一緒に訪れた女性は、4台の端末を持ち込み、こちらもそのうち1台を除いて再起動に成功。古いものは12~13年前に購入した端末とのことで、「旦那が若かった。10年は大きい……」とつぶやいた。子供の1歳頃の写真も多数発掘し、自分の小さい頃の写真を見た中学生は、「ちっちゃ!」と驚きながらも、記憶にない当時の自分や風景に夢中になっていた。
社会人の男性は、3台の端末を持ち込み、うち1台のみ再起動に成功した。「1年くらいしか使わなかった」という10年ほど前の端末だったが、高校2年生の頃の自分や友人の写真が多数見つかり、「(格好が)ダサい。なんでこんなの撮ったんだろうっていう写真ばかり」と苦笑。長渕剛の着うたを発見したときも、「なぜこれを設定していたのか……」とこぼしていたが、戸惑いと同時に懐かしさも感じたようだ。「写真を撮ったはいいけれど、(電源が入らず)見ることができなくなっていた。こうしてまた見られるようにしてくれるイベントがあるのは、すごくうれしい」と顔をほころばせていた。
auを身近に感じられるイベントに育てて、将来は「イタコみたいに」
西原氏は、これまでのイベントで参加者のケータイに詰まった思い出に何度も触れ、「人それぞれにストーリーがある」ことを実感してきた。東日本大震災の影響で大学の卒業式ができなかったものの、その時着る予定だった晴れ着を事前に試着している写真を思いがけず見つけ、「これでおばあちゃんに晴れ姿を見せられる」とほっとした表情を見せた女性。亡くなった妻のきちんとした写真を持っていなかったが、ケータイの中にきれいな写真を見つけ、「拡大して家に飾る」と喜んだ男性。
このau FUKUOKAでも、今の夫から結婚する前に送られたプロポーズの言葉のメモを見つけた女性や、東日本大震災発生当時に東北の知り合いとやり取りしていたメールを探す人、ケータイでしか撮っていなかった学生時代の写真や成人式の写真を見つけた人など、初日の早い段階から「心が温まるような思い出」に出会えていると話した。「思い出を一緒に共有することで、みなさんとすぐに親しい知り合いみたいになれる」ことに、イベントのやりがいを感じているようだ。
今のところ、端末に装着されている電池パックを使えるようにするのが主なサービス内容となっているが、今後は「電池パックが完全に故障していても、端末本体が生きていれば再起動できるようにしたい」と西原氏。再起動の成功が1000人、2000人と増えていったときに、それらたくさんの思い出エピソードをまとめて発信するなどして、「auをちょっとでも身近に感じてもらえるように」活動を続けていきたいと話す。
さらには「イタコみたいなことをやりたい」とも話す西原氏。亡くなったペットや両親の写真・動画を取り出すことができたときに、「まるで目の前に生きているかのようにVRで見せる。そんな風に、参加される方の予想を超える体験を提供できれば」という目標も語った。
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