インターネットイニシアティブ(IIJ)は、基地局以外はすべてIIJでコントロールしてサービスを提供する、“フルMVNO”を開始した。第1弾は法人向けのデータ通信サービス「IIJモバイルサービス/タイプI」で、第2弾として4月2日発売の訪日外国人向けのプリペイド・データ通信SIMカードにも適用される。今後は法人のIoT向けや、個人向けの「IIJmio」でも“フルMVNO”によるサービスが追加される見込み。
同社は“フルMVNO”について、これまで数回アナウンスしており、2017年11月の決算発表会では、2018年3月にまずは法人向けにサービスを開始すると案内されていた。
IIJがフルMVNOと呼ぶ形態は、従来はMNOが設備を持ち機能を提供していた加入者管理機能(HLR/HSS)などをIIJ(MVNO/MVNE)側で持ち、SIMカードの発行や電話番号の発番などを独自に行い、国際的にも独立した移動体通信事業者として、柔軟なサービスを提供できる形態を指している。同社はNTTドコモと協議を進め、実用化にこぎつけた。このため現時点ではNTTドコモの3G/LTEネットワークを利用するサービスとなる。
独立した移動体通信事業者という形になるため、スマートフォンなどのアンテナピクト周辺には「NTT DOCOMO」ではなく「IIJ」と表示される。MVNEとしてほかのMVNO事業者にサービスを提供した際には、独自の名称にもできるという。一方、フルMVNOのサービスで発行されるSIMカードは、従来のようにNTTドコモが発行・貸与するSIMカードではないため、SIMロックを解除した端末か、SIMロックフリー端末で利用する。
IIJではフルMVNOで可能になった大きな特徴のひとつとして、回線の管理機能を挙げる。これは、通信回線の任意のタイミングでの開通をはじめ、一時停止と再開(サスペンドとアクティブ)も、顧客である法人の管理者が任意に行えるというもの。これにより、使わない期間は回線をサスペンドにすることで月額費用を大幅に低減でき、法人用途のさまざまな場面で、回線維持費用を低減できるようになるとする。
また閉域網の構築についても、海外の通信網と組み合わせた国際閉域網を構築でき、法人のさまざまなニーズに応えられるようになるという。
「IIJモバイルサービス/タイプI」料金プラン
第1弾として正式に発表された法人向けのデータ通信サービス「IIJモバイルサービス/タイプI」は、回線を管理できる「SIMライフサイクル管理」機能が提供され、上記のような開通や回線の一時停止を任意に行える。開通作業の前にテスト通信も可能。
プラスチックのSIMカードは、切り離す段階でサイズを選べる3in1タイプで、デザイン(絵柄)も独自のものになる。
料金プランは、法人が導入する規模によりディスカウントされることになるが、1回線ごとの基本使用料は、月額200円(税抜、以下同)、サスペンド時は月額30円。10GBの容量は3200円となっている。監視カメラなどに向けた上り優先オプションが、月額2700円で用意される。使わなかったデータ容量は翌月繰り越しが可能。データ容量を使い切ると通信速度が256kbpsになる。
データ容量のタイプは、月間10GBが月額3200円、15GBが3900円、20GBが4400円、50GBが1万500円。契約回線全体でデータをシェアするパケットシェアタイプのプランも用意される。
このほかインターネット接続(ネットワークタイプ)については、動的IPv4が月額200円、固定IPv4が月額800円から選択できる。NATと閉域接続は0円。
例えば定額プランとして月間10GBを動的IPv4で利用する場合、基本使用料が月額200円、10GBが月額3200円、ネットワークタイプ費用(動的IPv4)が月額200円で、合計で月額3600円になる。この回線を休止(サスペンド)した場合の料金は、月額30円。サスペンドできる期間に制限はないとしている。
6月30日まではキャンペーンが実施され、先着1万回線限定で、3000円の初期費用が無料になり、最大3カ月間、月額料金が無料になる。
「Japan Travel SIM」にフルMVNOバージョン
フルMVNOの内容を適用した「Japan Travel SIM」が4月2日に発売される。ビックカメラなど既存の販路で販売される。従来パッケージは、1年程度は併売される見込み。
フルMVNOが適用された「Japan Travel SIM」は、サービスの基本的な内容は従来の商品と同じ。SIMカードのサイズは、法人向けパッケージ同様に、台紙から切り離す際に選ぶマルチタイプを採用した。
一方、前述のように、NTTドコモが発行するSIMカードではないため、SIMロックフリー端末で利用する必要がある。また1.5GBまたは3GBのデータ容量は、利用期限が30日間となっている。
従来のプリペイドSIMカードは、店頭に並んでいるパッケージに対しても、(MVNO側では)発番済みの回線の維持費用が発生するため、大規模に展開しづらいといった課題があったという。フルMVNOが適用された「Japan Travel SIM」では、APN設定を済ませて端末を再起動した後に、自動的にIIJから電話番号が発番される仕組みになっている。
夏までに個人向けの「IIJmio/タイプI(仮称)」を予定
15日には都内で記者向けの発表会が開催され、フルMVNOのサービス開始が案内された。IIJ MVNO事業部長の矢吹重雄氏は、法人向けに開始したフルMVNOについて、6月をめどに国際ローミングを提供し、国際閉域網の提供にも道筋を付けるとしたほか、上期の早い段階でIoT向けプランも提供したいとした。
2018年度までのスケジュールは、2018年度上期に、個人向けのデータ通信SIMとして「IIJmio/タイプI(仮称)」を提供する予定。従来のサービスと併存させる予定で、提供開始時期については「暑くなる前には出したい」(矢吹氏)としている。2018年度はまた、MVNEとしても「タイプI」を提供していく予定。音声通話サービスへの対応やその内容については、現時点では案内できるものはないとしている。
2018年度下期には「チップSIM」も提供する予定。半導体にSIM情報を書き込む「チップSIM」は、5mm×6mmといったサイズや、マイナス40度から105度まで対応する高い耐久性などの情報が公開され、組み込み機器向けに提供できることが紹介された。
さらにSIM認証とSIM内のメモリー領域を使った新たなサービスも案内されている。
このほか今後の予定として、内容を遠隔で書き換えられるeSIMの提供や、海外キャリアと直接接続した安価なサービス、フルMVNOのSIMが搭載されたルーターなどのサービスモジュールの開発・提供も案内されている。
質疑応答の時間には、IIJの設備投資によりコストがかさみ料金が安くならないのでは? という懸念が聞かれた。IIJ MVNO事業部 副部長の安東宏二氏は、「ランニングコストはそれほど変わらない」とした上で、「IIJの投資額は大きいが、しっかり売上を伸ばしていきたい。トータルで使い勝手の良さが出てきて、ほかのサービスにも波及するので、メリットは見せていく」とする。矢吹氏は「(従来の)コストの大きい部分は(MNOに支払う)接続料。今回の設備投資は料金に出るものではなく、むしろ接続料を削減できる」と、将来的にはコスト面でもメリットがあるとしている。
ドコモから提供される帯域については、既存の「タイプD」などとフルMVNOで「重畳するような形」(安東氏)としており、スケールメリットを活かしていく方針。
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