「ゲームやVR事業で培ったノウハウと資金力を組み合わせ、大規模に事業展開していく」――新たな収益の柱として期待を寄せるバーチャルYouTuber(VTuber)事業について、グリーの田中良和社長(兼会長)はこう話す。「VTuberとライブエンターテインメントを掛け合わせた所にビジネスチャンスはある」と意気込みを語った。
同社は4月5日、声優やタレントが3Dキャラクターになりきって動画配信などを行うVTuber事業への参入を発表した。
VTuberの発掘や育成、マネジメント、動画番組の企画や制作、配信などの事業を行う、100%出資の新会社「Wright Flyer Live Entertainment」(東京都港区)を設立。1〜2年間で約100億円規模を投資し、グローバルで事業を展開する計画だ。
この内約40億円を使う投資プロジェクト「VTuberファンド」も17日に発表。VTuberのクリエイターやスタートアップ企業を支援する。
サイバーエージェント子会社のCyber ZがバーチャルYouTuberのマネジメント事業に特化した新会社を設立した他、ドワンゴがVRライブ配信サービス「バーチャルキャスト」を提供するなど、大手IT企業も本腰を入れる。
人気VTuber集団「にじさんじ」を運営するいちから(東京都港区)や、VTuberのマネジメント事務所「ENTUM」(エンタム)を展開するDUO(東京都渋谷区)など、ベンチャー企業も続々と参入している。
技術力や資金力に強み
「VTuber事業を展開するベンチャーはいくつもあるが、これまで培ったノウハウや資金力を武器に大規模な事業を展開できるのが当社ならではの強み」と田中社長は強調する。ゲーム事業ではIP(知的財産)展開をする上で、出版社やレコード会社などさまざまな企業と取引・協業した実績があり、VR事業では、3D空間でアニメキャラをどう魅力的に表現するかや、ユーザーとのインタラクションを意識してきたという。
「ゲーム・VR事業で培ったものが、VTuberを作る技術力や、3Dキャラを魅力的に見せる表現に生きる」(田中社長)
しかし、VTuber市場は立ち上がったばかり。荒木英士取締役 上級執行役員は「まず市場や文化を作ることが大事。国内だけで数年以内に数百億円規模になると考えている」とし、「まずは投資先行でファンや事業の基盤を作り、VTuber市場のメジャープレイヤーになれるよう取り組む」と意気込む。
ゲームは海外展開が前提に
同日、グリーが発表した2017年1月〜3月の連結業績は、売上高が178億円(前年同期比19.9億円増)、営業利益が27億円(同12.3億円増)で、純利益が18億円(同3.2億円増)だった。売上高は未達だったが、営業利益は計画を上回った。
ゲーム事業は、ジャニーズのアイドルグループ「NEWS」との恋愛ストーリーが楽しめるスマートフォンゲーム「NEWSに恋して」や、スクールアイドルプロジェクト「ラブライブ!」を題材にした「ぷちぐるラブライブ!」などが好調という。
モバイルゲームは、引き続き運営強化と海外展開を進める考え。北米向けに配信した「DanMachi - MEMORIA FREESE」(原作は日本のライトノベル「ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか」)は立ち上がりが好調で、リリースから20日後の売上では日本版を上回った。
アジアや欧州地域での提供も計画中で、他のタイトルもグローバル展開を前提に開発を進めるとしている。
2月には家庭用ゲーム市場への参入を表明した。第1弾として自社タイトル「釣り★スタ」のNintendo Switch版を2018年内にグローバル配信するが、主力スマートフォンゲーム「アナザーエデン 時空を超える猫」もSwitch向けに提供する予定だ。
「VTuber事業は直近数年で収益化できるものではない」とし、主力のゲーム事業や広告・メディア事業で収益を支えて通期目標を達成する考えだ。
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