2018年4月28日土曜日

[ITmedia Mobile] 「ベーシックパック」「ZTE問題」「ブロッキング」――ドコモ18年度決算説明会一問一答

 NTTドコモは4月27日、2017年度の通期決算を公表した。それに合わせて、新しいパケットパックも発表した

 この記事では、同決算の報道関係者向け説明会で行われた質疑応答の主なやりとりを体裁を整えた上で掲載する。

吉澤社長 決算説明をする吉澤和弘社長

料金について

―― 「ベーシックパック」の料金設定について尋ねる・ステップ3の「5GBまで」から、ステップ4の「20GBまで」は、容量的な乖離(かいり)が大きいように思うのだが、なぜこのようになったのか。

吉澤和弘社長 現行の(1人向け)パケットパックは、「データSパック(2GB)」「データMパック(5GB)」の次が「ウルトラデータLパック(20GB)」となっている。

 これらとの整合性を取るために、5GBの次は(ウルトラデータLパックと同じ)20GBとさせていただいた。

―― ベーシックパックやウルトラシェアパックを導入した狙いを聞かせてほしい。(ソフトバンクとウィルコム沖縄の)「Y!mobile」や(KDDIグループの)「UQ mobile」の攻勢があったからか。

吉澤社長 (データ)利用量の少ないお客さまは、弊社だと「データSパック」を契約することが多い。しかし、(実際の通信容量が)それより少ないお客さまもいる。

 総務省の検討会の中でも「利用量の少ないお客さまにできるだけチューニングした料金を」という要請があり、弊社のデータSパックもそれなりに評価を受けたが、そこからさらに(料金的に)踏み込もうと考えた。

 もう1つ、(ユーザーの)利用動向を分析をする中で、パケット数の少ないお客さまにおけるポートアウト(MNP転出)が多くなる兆候が見られるようになった。

 これらを踏まえて、顧客基盤の強化を狙ってベーシックパックやベーシックシェアパックを導入したとご理解いただきたい。

―― ベーシックパックやベーシックシェアパックの導入でデータ通信量の少ないユーザーからの収入がさらに減ることになると思う。どのくらいの減収影響が出ると見ているか。

佐藤啓孝取締役 ベーシックパックやベーシックシェアパックは、お客さま還元の一環なので、ある程度の減収は見込んでいる。一方で、(両パックは)解約抑止やアップセル(通信容量の増大による増収)効果もある。

 2018年度段階では約300億円の減収を見込んでいるが、時がたつにつれて(収益が)回復していき、全体としてプラス(増収)になっていくと考えている。

―― 御社では、2年契約が終わるタイミングで(2年契約の継続で特典を得られる)「ずっとドコモ割コース」か(定期契約なしでも料金据え置きだが特典のない)「フリーコース」を選択できるようになっている。フリーコースの利用状況を教えてほしい。

料金担当者 フリーコースを選択されるお客さまは、ドコモを解約するかポートアウトすることを考えていらっしゃるお客さまがほとんどで、いつかはドコモから出て行ってしまう。

 よって、契約者数全体に占める割合は少なく、ストックされない(フリーコースのままドコモにとどまるユーザーは少ない)状況だ。

佐藤取締役 質疑応答で財務面の説明をする佐藤啓孝取締役

中国ZTEが米国企業との取り引きを禁じられた件について

―― 中国ZTEが米商務省から米国企業との取り引きを禁じる命令を受けた(参考記事)。これによって、ZTE製端末においてQualcommのチップセットやAndroidの一部ソフトウェアが事実上使えなくなるという影響が懸念されている。

 御社でも「MONO MO-01K」や「M Z-01K」といったZTE製端末を取り扱っているが、どのような影響を受けるか教えてほしい。

吉澤社長 「ドコモとZTE」という関係では、ご指摘の通り、現在は(ZTE製の)MO-01KとZ-01Kを販売している。調達済みのものについては、在庫を確認しながら販売は続けている。「故障対応できなくなるのでは?」という心配もあると思うが、現状確保している(部品や交換端末の)数なら、長期間対応できる状況だ。

 一方で、OSであるAndroidが(米商務省の命令によって)サポートされない(できない)事態が発生すると、既存のお客さまにも「OSバージョンアップができない」といった影響が出ることが考えられる。

 この点については、お客さま保護の観点からZTEが現在(ソフトウェアの扱いについて)確認を進めている。ZTEは米国にもユーザーがいる(筆者注:米国のスマホ販売シェアで、ZTEは上位に入っている)。既存ユーザーがAndroidをバージョンアップできないとなると、顧客保護の観点から重大な問題となる。

 弊社としては、ZTEの確認の結果を待ってから対応を考えたい。

―― 「今ある在庫は販売する」ということは、在庫が枯渇した場合の追加発注はないのか。

吉澤社長 ZTEの端末にはQualcommや(同じく米国企業である)Intelの部材が使われている。それが調達できないということは、我々が販売する端末も作れないということになる。

 そういう状況なので、現在は新たな調達は止(と)めている。

海賊版サイトへの「ブロッキング」について

―― 御社は4月23日に(マンガやアニメの)海賊版サイトに対するブロッキングを行う旨を発表した。緊急措置として行うということだが、政府が名指ししたサイトは事実上消えてしまっている。これからどうするのか。

吉澤社長 おっしゃる通り、具体的に名前が挙がった3つのサイトは現状では閉鎖されている(アクセスできない状態になっている)が、場合によっては復活するかもしれないし、不完全にしてもトップページだけはアクセスできる状態になるかもしれない。

 それら自身(名指しされたサイト)をブロックしないことには、次にどういうアクションを起こされるか分からないので、ブロッキングするという基本的な考え方は変えるつもりはない。現在準備を進めているが、「閉鎖されたからブロッキングは実行しない」ということはない。

―― この件については、報道各社も強い関心を寄せている。反応に対する所感もお聞かせ願いたい。

吉澤社長 世の中の(ブロッキングに対する)関心が非常に高いことは承知している。

 「著作権侵害」をどうにかしてほしいという要請と「通信の秘密」の2つのせめぎ合いが起こっていて、それをどうするかという結論は出ていない。なので、可及的速やかな立法を(政府に対して)求めている。

 ただ、我々も「dアニメストア」を始めとするインターネットのコンテンツビジネスに取り組んでいるが、その発展を海賊版サイトが阻害しているという事実は誰もが認めている。それを見過ごすわけには行かないというのが、我々を含むNTTグループの考え方だ。

 いろいろな意見があるのも“当然”承知している。

―― インターネットのコンテンツビジネスの動向を意識したということか。

吉澤社長 ビジネスという意味では、発展を阻害する著作権侵害サイトへの対策は“必要”であると考える。

―― 政府の決定前にブロッキングを考えたことはあるか。

吉澤社長 弊社としては、決定前に検討したことはない。決定後に検討した。

―― 手法を問わず、ブロッキングは憲法や法令に違反する可能性があり(参考記事)、訴訟提起を受けるリスクがある。それをどう評価するか。

吉澤社長 なかなかコメントしにくい所ではあるが、(ブロッキングの方針が)「通信の秘密」を侵害しているかどうかを我々が判断することは難しい。

 我々が政府の決定の場にいたわけではないが、法務省や総務省が中に入って検討したと聞いている。そのような中で「(ブロッキングが)適当である」という決定をしたということなので、我々はそれに対して自主的に(ブロッキングすると)判断したということになる。

 繰り返しだが、法令に違反するかどうかは、我々にはコメントできない。

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