ドコモ、KDDI、ソフトバンクの3社は、5月9日に「+メッセージ」と呼ばれる新サービスを開始する。+メッセージとは、世界各国の通信事業者が加盟する業界団体・GSMAが標準化した「RCS(リッチコミュニケーションサービス)」の規格に基づいたメッセージングサービス。日本からも、各社が仕様の策定に協力している。
GSMAによると、2018年2月時点では北米や欧州を中心に、27カ国、50キャリアで導入されており、ネットワークベンダーではEricssonやHuawei、ZTEが、端末ベンダーではSamsungやHuawei、LGエレクトロニクスといった名だたるメーカーがこれを支持している。Googleは、同社が2015年に買収した「Jibe」の技術を活用し、Android標準の「Androidメッセージ」をRCSに対応させた。
「さらに30カ国、40のキャリアで導入が予定されている」(ドコモ スマートライフビジネス本部スマートライフ推進部 コミュニケーションサービス担当部長 藤間良樹氏)と、世界各国で急速に広がる兆しを見せているメッセージングの規格だ。特にGoogleとGSMAが201年にRCS普及を目指すイニシアチブを立ち上げて以降、利用するキャリアが急速に増加している。
SMSの拡張版と位置付けた+メッセージ、3キャリア共同でUIも統一
+メッセージは、そのRCSを下敷きに開発されたサービスだ。ユーザーインタフェースは、よくあるチャット型のメッセンジャーのもの。左側に相手のコメントが並び、やりとりが進めば進むほど、スレッドが縦に長くなっていく形になる。テキストや写真、動画も、区別なく時系列に並んでいくのが特徴だ。画面下にはテキストを入力するウィンドウの他、スタンプや画像、動画、位置情報といった各種付加データを加えるためのボタンが並んでいる。
これだけだと、LINEやFacebookのMessengerといったサービスとの違いが分かりづらいが、+メッセージは「SMSの進化版」と位置付けられている。そのため、コミュニケーションを取る相手とはあらかじめ“友だち”になっている必要がなく、SMSと同様、電話番号を知っているだけで送受信することが可能だ。やりとりできるメッセージの文字数が全角70文字から2730文字に広がり、最大100MBの添付ファイルも付けられるようになった。
さらに、SMSでは1通3円程度の料金がかかっていたのに対し、+メッセージはパケット通信料としてカウントされる。SMSとは異なり、回線交換ではなく、データ通信を使ってメッセージをやりとりしているというわけだ。+メッセージはあくまでRCSの一部で、「VoIPなど、一部のAPIは使っていない」(藤間氏)というが、いわばLTE時代のキャリア版メッセンジャーといえるかもしれない。
もっとも、これを1キャリアだけが始めても意味がない。コミュニケーションサービスは利用者が増えることがすなわち価値の向上につながり、それがまた利用者を増やすことになる。俗にいう「ネットワークの外部性」が働きやすい分野なのだ。過去には、iモードがインターネットのコンテンツやユーザーを取り込むことで、ネットワークの外部性を生かして拡大したという経緯もある。
一方で、1つのキャリアに閉じたネットワークサービスは、ユーザー数が増えず、ひっそりと終わってしまうことも多い。ドコモでいえば「プッシュトーク」、KDDIでいえば「Hello Messenger」が、そういったサービスの代表格といえる。これらのサービスも、仕様を公開し、他キャリアなどに開放していれば、もっとユーザーに使われていた可能性もある。RCSはこうした失敗を糧に、3キャリアで同時にスタートすることにこだわった。ドコモの藤間氏は語る。
「(SMSや絵文字は)他社にメッセージが送れない、絵文字が送れないという、多くの不満をいただいていた。こういった過去の経験も踏まえ、サービス提供前からキャリア間で仕様を統一し、提供することにした」
仕様はもちろん、ユーザーインタフェースや操作方法、サービス名称、サービスロゴまで統一。キャリアの枠を超えた、RCSベースのスマートフォン用メッセンジャーが出来上がった。iOS向けのアプリも開発を進めており、サービス開始日以降に導入される。
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