2018年3月6日火曜日

[ITmedia Mobile] iDやdカードを抱えるドコモがなぜ「d払い」を提供するのか?

 日本にも「アプリ決済」の波が到来しつつある。

 「楽天ペイ」や「LINE Pay」のインタビュー記事でも紹介したが、各社ともに2018年から2019年にかけて、この新しい支払い手段が一気に拡大することになると考えているようだ。アプリ決済とは、スマートフォンの「アプリ」を使い、QRコードやバーコードを介して店頭での支払いを可能にする。またアプリを介して支払いを行うため、QRコードのような手段を使わずとも、オンラインを通じて支払えるのも特徴だ。

 こうした中、アプリ決済の市場にニューカマーがやってきた。おサイフケータイでもおなじみのNTTドコモだ。

 ドコモが2018年4月から提供予定の新サービス「d払い」では、QRコードまたはバーコードを店頭の会計時に見せることで支払える。もちろん対応するサービスならネットでの支払いにも利用できる。dカードを登録して利用する他、電話料金との合算払いでも利用できるというのは、携帯キャリアならではのメリットだ。買い物でdポイントをためられる他、たまったポイントをそのまま支払いに充てることもできる。

d払い QRコードやバーコードを読み取ってもらうことで支払える「d払い」
d払い アプリを立ち上げ、QRコード/バーコードの画面を支払い時に見せる
d払い アプリからdポイントをためることもできる

 このd払いの展望について、ドコモ執行役員でスマートライフビジネス本部 プラットフォームビジネス推進部長の前田義晃氏に話を聞いた。

多様な決済手段の提供が重要

 まずd払いに関して思い浮かぶ疑問の1つが、「ドコモっておサイフケータイを推進する立場だったのに、それを諦めてQRコード決済の提供を始めるの?」という点だ。Apple PayがiD、QUICPay、Suicaに対応したとはいえ、日本全体でみればガラケーを含む携帯電話の普及はほぼ頭打ちとなっており、母数が拡大しない中で、FeliCaベースの決済サービスを広げるのには限界がある。こうした疑問に前田氏はこう答える。

 「ここ最近、中国勢をはじめ、楽天やLINEなどの(2次元コードやバーコードを使う)決済サービスに、ある種の機運が高まっているというのは確かにある。もともとわれわれがiDとdカード(当時の名称はDCMX)を始めた理由は、少額決済市場の攻略が目標だった。当時、夏野さん(ドコモ執行役員だった夏野剛氏)がDCMXを始めると言った時は、特に日本での少額決済での現金比率の高さが指摘されており、携帯での使いやすさと親和性を考えつつ、この市場での現金決済比率を減らしていくという狙いがあった。その考えは今でも変わらず、『多様な決済手段で便利に使ってもらいたい』というのがd払いの出発点となる」(前田氏)

d払い NTTドコモの前田義晃氏

 日本ではよく「決済サービスが乱立しすぎている」という意見が聞かれる。だが適度にさまざまな支払い手段が存在し、それを店舗が受け入れる体制ができているのは、競合面からみてユーザーのメリットになる。中国の「Alipay(支付宝)」や「WeChat Pay(微信支付)」が典型だが、強力な2社が存在して互いに切磋琢磨(せっさたくま)しているからこそ加盟店開拓が一気に進んで利用できる場面が増え、ポイント優遇等での恩恵も十分に受けられる。

 「実際、決済の場面ではさまざまなカードが利用できるが、(アプリ決済においても)同様に気軽に買い物ができる仕組みを提供しようということだと考えている。(昨今のトレンドは)バーコードなどでも同様のインフラが可能になってきたということだ」と前田氏は説明する。

 ドコモの場合、前述のiDとdカードのように、既に複数の決済手段を提供している。さらに請求方法はクレジットカードの他、電話料金との合算払いもある。LINE Payの場合はさまざまな銀行口座と接続することでユーザーの利便性を高めていたが、ドコモの場合はキャリア決済という大きな強みがある。

 「ドコモのビジネスではiDとdカードの利用が進み、その市場が拡大してきている。キャリア決済も17〜18年の蓄積があり、既に多くの人が利用している。この決済規模は直近で4000億円に達しており、携帯料金の合算払いも合わせれば5000億円を超える規模になる。弊社の場合はdマーケットでのビジネスも展開しているが、こうした市場をさらに拡大させていきたいと考えたら、リアル店舗での決済をどう取り込んでいくかを考えるのは自然なこと。この間口を広げるd払いを含め、事業全体を成長させていくのが狙い」(前田氏)だという。

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