「現代はフィンテック(IT技術を活用した金融取引技術)などのように、さまざまな分野にIT技術が組み込まれている。当社は葬儀にテクノロジーを導入し、“葬テック”事業を始める」――遺影のデジタル加工などを担うアスカネットの福田幸雄社長は、3月23日に都内で開いた会見でこう話した。
アスカネットは同日、SNSでの訃報配信や、EC(インターネット通販)プラットフォーム上での弔電・供物・供花の購入に対応した新サービス「tsunagoo(つなぐ)」をスタートした。葬儀会社に導入し、導入先がエンドユーザーに提供する「BtoBtoC」サービスとして展開していく。
アスカネットは葬儀会社に月額料金を課すほか、弔電の売り上げの一部と、各商品の決済手数料を得る。月額料金は個別見積もりで、弔電の価格は1000円程度を予定する。
訃報用のWebページを自動作成
「tsunagoo」では、遺族が入力フォームに必要情報を入力するだけで、自動で訃報用のWebページを作成できる点が特徴。Webページのリンクは、電子メールやコミュニケーションアプリ「LINE」、FacebookなどのDM(ダイレクトメッセージ)で配信できる。
仮通夜、通夜、告別式の日程なども通知できるため、従来のように書面や電話で訃報を伝える手間を解消した。訃報を印刷して配布・郵送することも可能だが、その際は用紙の下部にQRコードを配置できる。届いた人はスマホで読み込むことで、前述のWebページにアクセス可能だ。
Webページ内には、受け取り側が(1)弔電の送信、(2)供物・供花の注文――などができる専用フォームも設けた。弔電は、明朝体、楷書体、ゴシック体からフォントを選択できるほか、定型文とオリジナル文を選ぶことも可能。
福田社長は「tsunagooの弔電は、喪主ではなく葬儀会社に届く仕組みを採用し、喪主が仕分けなどに要する手間を解消した。アスクルやヤマト運輸などのEC・運輸事業者も電報サービスを展開しているが、当社はより簡易に送信できる方法を整備し、価格を抑えた点が強みだ」と自信を見せる。
供物・供花は、アスカネットが開発した簡易ECサイト上で販売し、葬儀会社のニーズに応じた商品をラインアップする。弔電を含む各商品の決済方法は、クレジットカード、携帯電話料金との合算(キャリア払い)、電子マネー「楽天Edy」「WAON」「nanaco」「Suica」など多岐にわたる。
各商品の購入データをCSVファイルに出力し、喪主に提供することも可能。返礼品を送付する際のリストとして有効活用できる。
2000社への導入目指す
福田社長は「1995年の創業当時から、いち早く遺影のデジタル加工に着手していた当社ならではのサービスだ。全国に葬儀会社は6000社程度存在するが、早い段階で2000社程度に加盟いただくのが当面の目標」と説明。
「資金管理面で課題は多いが、今後は参列者からWeb上で香典を集金し、喪主に送金する仕組みを作りたい。Web上で葬儀の出欠管理を行い、葬儀時に参列者が記帳する手間を解消する技術の導入も視野に入れている」(福田社長)と展望を語った。
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