一般的に、鉛筆には黒鉛系の芯があり、これが削られることで、書いた文字や絵が見える仕組みになっている。鉛筆が発明される以前には、石を削って跡をつけたり、筆を使ってインクを塗ったりして、日常を記していたはずだ。中国の歴史ある筆の起源を追い求めて行けば、間違いなく紀元前にまでさかのぼるだろう。
一方、西洋では鉛筆の発明されるまではペン先に銀などの金属を用いる「メタルペン」で字を書いていたと言われている。感覚的には釘の先で字を書くイメージに近いのかもしれない。レオナルド・ダ・ヴィンチも愛用者だったとかなかったとか。そんな鉛筆以前の筆記道具を現代に再現している商品も多い。
筆者はイタリア最大のカロッツェリア、ピニンファリーナによるメタルペン「Pininfarina Cambiano」(ピニンファリーナ・キャンビーノ)を数年前に購入して、このメタルペンを時々活用している。
相変わらずミーハーな購入動機は、インクレスで半永久的に使えるというメタルペンの筆記感覚にきわめて興味があったのと、イタリア感満載のナチュラル素材と異素材の組み合わせグッドデザインを手にしてみたいという2つだった。
メタルペンの高級路線の雄がピニンファリーナ・キャンビーノなら今回ご紹介する「Beta Pen(ベータペン)」は、ウォールナット材の木目を生かし普及価格帯のメタルペンを目指した商品だ。
社名であるaxel weinbrecht(アクセル ヴァインブレヒト)から「AXEL」をデザイン上“AXL”と3文字で表現。ペン本体をはじめ、パッケージから取説まで“AXL"を多少モディファイしたアイコンのようなロゴは、なかなか良い味を出している。
100%アートやデザインフィールドに振り切らず、ビジネスライクなエリアにフォーカスしたベータペンは、同じ欧州産の商品でも日本人の大好きなドイツ製だ。有名なバウハウスの影響を受けたこのペンのインダストリアル・デザインは、10年ほど前にグッドデザイン賞も受賞している。
外形のバリエーションやカラーリングなど、多岐のモデルにわたっているが、共通の特徴はペン先とは反対側の先端の一部が斜めにカットされたユニークなデザインだ。
さて、今回は筆者が既に使っている愛用のピニンファリーナ・キャンビーノと一般的な鉛筆との3本を比較してみた。
まず、ベータペンを使ってみて筆記時に一番感じるのは、本体に金属パーツを贅沢に使っているピニンファリーナ・キャンビーノに比べてきわめて軽いことだ。
両方のペンを正確なキッチンはかりで測定してみたところ、ピニンファリーナ・キャンビーノの38gに対し、ベータペンが11gと、3分の1以下の重量だった。一般的な鉛筆は3~5g近辺なので、ベータペンはこの手の金属チップペンでは超軽量の部類に入るだろう。
実際の書き味だが、ベータペンの筆跡はそのペン先と同様かなり細い。この点は筆者愛用のピニンファリーナ・キャンビーノとも大きく異なる点だ。一般的なHBクラスの柔らかい鉛筆と比較すると当然ながら視認性は相当レベル落ちる印象だ。
筆跡の濃淡さだけをとらえた場合、ベータペンとピニンファリーナ・キャンビーノの印象は近い感じがするが、筆跡の太さが大きく違うことが視認度の差となって現れている感じだ。筆者にはとてもそんな能力は無いが、ベータペンは根気よく細かな精密画を描くには向いているのかもしれない。
手書き市場にはすでに、メインストリームのタブレット系を含め、電子ペーパー系の技術を使った手書き筆記具などが多く登場してきている。アナログ無限階調を描き出せる極細のベータペンを十分使いこなせれば、過去数多くの手稿を残し、現代のテクノロジー文明にも多大な影響を与えたダヴィンチになれるかもしれない。
製品名 | 販売元 | 価格 |
---|---|---|
Beta Pen | axel weinbrecht | 3780円 |
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