特集「テクノロジーが変える「資金調達」のカタチ」:
財務部門の大きな役割の1つが資金調達だ。これまでは、金融機関からの融資(デットファイナンス)や、株式によるマーケットからの調達(エクイティファイナンス)が当たり前だったが、近年はクラウドファンディングや仮想通貨を使用した資金調達など、新たな手段が注目されている。
こうした既存の手法に頼らない資金調達を成功させるためには、何が必要なのか。成功企業やサービス提供者に話を聞く。
2018年1月、ある米国企業が仮想通貨を使った資金調達であるICO(イニシャル・コイン・オファーリング)を実施して世間を驚かせた。ICOを行った企業の名前はイーストマン・コダック。かつて銀塩フィルムの世界的なメーカーとして知られた名門企業である。
コダックは、デジカメの普及に伴う銀塩フィルムの消滅という危機的な事態に直面し、12年に米連邦破産法第11条(日本における民事再生法に相当)の適用を申請。13年には高速印刷機などの分野を主力とする新しい会社に生まれ変わった。
そのコダックが、独自の仮想通貨「コダックコイン」を発行し、デジタル画像の権利保全や販売を行う革新的なプロジェクトを発表したことから、株価は一時、3倍に跳ね上がった(現在、増資に応じる投資家の適格要件のチェックで実施のスケジュールが遅れている)。
コダック以外にもICOと呼ばれる新しい資金調達を実施する企業が増えている。日本でも東証マザーズに上場しているメタップスがICOを実施したほか、ネット金融大手のSBIホールディングスも大規模なICOを計画している。
企業が資金を調達するための手法としては、株式の新規発行を用いる方法(エクイティファイナンス)と、銀行などから融資を受ける方法(デットファイナンス)の2つに大別できる。
だがICOは、株式の発行でも融資でもないので、既存の枠組みには入らない新しい資金調達手法といえる。こうした新しい手法はどのように位置付ければよいのだろうか。
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