2018年4月29日日曜日

[ITmedia News] 「超歌舞伎」、初音ミクがスクリーンの外に 鏡音リン応援する「鏡屋!」の声も

 2018年の「超歌舞伎」は、初音ミクがスクリーンの外へ──伝統芸能の歌舞伎とテクノロジーを融合した舞台「積思花顔競 祝春超歌舞伎賑」(つもるおもいはなのかおみせ またくるはるちょうかぶきのにぎわい)が、ニコニコ超会議2018(4月28〜29日、千葉・幕張メッセ)で上演された。

山車(だし)に乗って登場した初音ミク

 主演は歌舞伎俳優の中村獅童さんとVOCALOIDキャラクターの初音ミク。NTTの映像技術を使い、山車(だし)に乗った初音ミクがステージ上を移動する演出を取り入れたり、ボーカロイドの鏡音リンが初登場したりと、新たな演出で会場を沸かせた。

鏡音リンが登場
映像技術を駆使

映像技術がさらに進化

 3回目となる今回の超歌舞伎は、平安時代が舞台。顔見世舞踊の大作「積恋雪関扉」(つもるこいゆきのせきのと)に着想を得たという。中村さんは超歌舞伎では初の悪人役に挑んだ他、それに敵対する相手の2役を演じ、初音ミクも小野初音(おののはつね)姫と物語の鍵を握る白鷺(しらさぎ)の精霊の2役を演じた。

白鷺(しらさぎ)の精霊

 超歌舞伎の見どころは、スクリーンに投影されたCGキャラクターの初音ミクと、中村さんら生身の歌舞伎俳優との掛け合い。普段は舞台中央のスクリーン上に現れる初音ミクだが、今回は山車に乗ってステージ外から登場した。

 山車には、NTTの「両面透過型多層空中像表示装置」を使用。下部のモニターに初音ミク、上部のモニターに背景を映し、装置内に設置した鏡に反射させることで、正面からも背面からも初音ミクと背景を立体的に見られるようにした。

イベントホール後方に設置された「両面透過型多層空中像表示装置」の展示

 舞台上では、山車が舞台中央を通り過ぎるとスクリーン上に初音ミクが移動する(山車から降りたように見せる)演出もあり、会場からは「初音屋!」(初音ミクの屋号)という掛け声が飛び交った。

 大詰めのシーンでは、「分身の術」としておなじみになった、演者の動きをリアルタイムで映像化するNTTの技術「Kirari!」を使うシーンが。これまでは背景色と被写体の色が似ているときは被写体の抽出が難しかったが、今年は機械学習を活用してこれを克服。

舞台で動く中村獅童さんの姿を上部スクリーンにリアルタイムで投影

 被写体と背景の色情報を教師データとして学習させ、背景に変化があるようなシーンでも高い精度で被写体を抽出できるようになったという。

 NTTの担当者は「これまでは、被写体抽出の精度が悪くても照明条件を工夫するなどして対応してきた。機械学習を使うことで、背景色と被写体の色の違いを精度高く認識できるようになった」と説明する。

クライマックスで「鏡屋!」の声

 物語のクライマックスでは、ボーカロイド鏡音リンが初登場。劇中曲はリンが歌う楽曲「天樂」(てんがく)だ。超歌舞伎では、舞台の両端にニコニコ生放送の画面が表示され、リアルタイムでコメントが閲覧できるようになっている。

 鏡音リンが登場して「鏡屋!」の屋号が飛び交う中、リンが「ニコニコユーザーよ」と呼びかけ、「あまたの人の言の葉を」とコメントを打ち込むよう訴えかける。視聴者が打ち込むコメントが大きな力となり、物語は佳境を迎える。

たくさんのコメントが集まった

 最後は中村さんが会場席に登場。その両手にはサイリウムが握られている。17年にがんを公表して治療を続けていた中村さんは「帰ってきたぞー!」と会場の中心で叫び、同じようにサイリウムを掲げる観客たちに迎えられ、会場を大いに盛り上げた。

中村獅童さん
「おかえり!」というコメントも

 超歌舞伎は28日・29日の午後1時と午後4時の4回公演。ニコニコ生放送でも視聴できる。ドワンゴによると、16〜17年の公演で、ニコニコ生放送と合わせて約30万人が鑑賞しているという。

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