「海外の悪質な、確信犯的に運営されている違法サイトに対しては、ブロッキングしか対抗手段が原理的にありえない」――カドカワ社長の川上量生氏は4月24日、政府が漫画・アニメ海賊版サイトのブロッキングをISPに促す方針を打ち出したことについて、歓迎の意思を表明するブログ記事を公開した。
カドカワは、出版社KADOKAWA・Web企業ドワンゴを傘下に持つ持ち株会社。「出版社という権利者としてだけでなく、規制される可能性を心配すべきかもしれないWeb事業者でもある」という立場を明らかにした上で、持論を展開している。
記事で川上氏は、「今回の緊急避難的な3サイトのブロッキングについて、積極的な姿勢を示した政府の決定を支持する」と表明。「法治国家として法制化を先行するべきだという意見は、正論」としながらも、「政府の著作権法等の法改正の議論はあまりにも時間がかかりすぎていた」と指摘し、立法を前提にしつつも、悪質なサービスに限ってブロッキングすべきだと主張する。
昨年8月以降、電子書籍の売り上げペースが急減するなど、「特に漫画村による被害は甚大」と指摘。「特に若い世代では、電子書籍を買わないどころか、ただでネットで読めるのに紙のマンガをなぜ買わないといけないのかという認識まで広がりつつある」とし、「出版業界は非常に危機的な状況」だと訴える。
さらに、海外サーバで提供されている違法サービスに対し「日本の公権力を具体的に行使する手段がない」「ブロッキングしか対抗手段が原理的にありえない」と主張。「インターネット業界がこのことを分かっているはずなのに回避手段があるからと曖昧に誤魔化していることは、欺瞞であるとさえ思う」と批判する。
海賊版サイトの収益を支えているネット広告を差し止めるべきだとの主張に対しても「海外のアドネットワークを経由したり、出稿元がアダルトサイトなど、イメージの毀損をおそれないサイトの場合は、広告を止めない」などの問題があると指摘。海賊版サイトの多くが利用しているCDNのCloudflareを叩くべきという意見には、「現状は交渉可能な相手ではない」と切り捨てる。
ブロッキングが通信の秘密を侵害するとの指摘に対しては、「日本の法の及ばない海外のインターネットから、日本に住むユーザーへ違法サービスを提供するという、法の抜け穴をどう埋めるかということ」「むしろ法治国家としては当然の行為ではないでしょうか?」と問題提起している。
川上氏はこれまで5年間ほど、海外の違法サイト問題はブロッキングでしか解決できないと主張してきたが、議論はほとんど行われてこなかったという。だが、海賊版漫画・書籍サイト「フリーブックス」(昨年閉鎖)以降風向きが変わり、漫画村の実態も明らかになる中、「今年に入ってからブロッキングの議論が一挙に進展した」という。
記事の最後で川上氏は「変化の早いネットの世界に比して対応が後手にまわりがちで時間もかかっていた法制化の議論を、一挙に進める好機だと関係者の皆様には捉えていただき、違法サイトに対して実効性のあるブロッキングの法制化にむけて、みなさんの知恵をお借りできれば」としている。
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