こんにちは、日本HPでPCの製品企画を担当している白木智幸です。2017年11月に公開した記事「『LTE対応』のノートPCが少ない理由」が好評だったので、今回はLTE関連でよく聞く「SIMロックフリー」で気を付けるべきポイントを紹介します。
SIMロックフリーは「SIMフリー」と略されることもありますが、特定の通信事業者に限らず、「どのSIMカードを挿しても通信できる」という意味です。国内ではドコモ、au、ソフトバンクという主要な3つの移動体通信事業者(MNO)がありますが、いずれのサービスでも利用できます。
逆に、SIMロックが施された端末は、その端末を販売した通信事業者のSIMカードしか通信できません。例えば、ドコモで買ったスマートフォンやタブレットが、auやソフトバンクのSIMカードを挿しても使えないといったものです。使用が縛られる代わりに、大幅な割引が受けられるといったメリットがありますが、ある一定の期間が経過するとSIMロックを解除できるサービスも各社が提供し始めています。
最近は「格安SIM」という、MNOが提供するインフラを利用して通信や通話サービスを提供する仮想移動体通信事業者(MVNO)も増えました。割安な料金や柔軟性のあるプランが人気を集め、着実にユーザー数を伸ばしているようです。
こういった点だけを見ると、「SIMロック端末は制限があり、どのキャリアでも利用できるSIMロックフリーが万能」と感じるはず。しかし、物事には「何かを得れば何かを失う」という関係が少なくありません。
一見するといいことばかりのように見えるSIMフリー端末ですが、実際はどのようなデメリットがあるのでしょうか。
「SIMロックフリー」のデメリット
さまざまな通信事業者のSIMカードが使えるSIMフリー端末は、利用サービスを選べる自由度がある一方で、キャリアごとに対応が異なる通信方法や電波の周波数帯(バンド)をユーザー側が考える必要があります。
LTEネットワークの電波は、700MHz帯、800MHz帯、900MHz帯、1.5GHz帯、1.7GHz帯、2GHz帯と非常に多くの周波数帯が各通信事業者に割り当てられています。携帯電話を黎明(れいめい)期から使っている方は、それぞれの特性を何となく体感しているかもしれませんが、800MHz、900MHzなど、低い周波数帯は遠くまで電波が届き、2GHzなど高い周波数帯は近くまでしか届かない代わりに通信速度を高速化しやすいというメリットがあります。
通信事業者は、地域事情や土地特性を見ながらこれら複数の周波数帯(バンド)を使い分けることで、屋内外や山間部であっても快適な通信ができるようネットワークをデザインしています。当然、複数の周波数帯をサポートしている端末のほうが、通信事業者が想定する安定した通信を得られるのです。
最近の端末は、複数の周波数帯を同時に組み合わせて通信する「キャリアアグリゲーション」(CP)にも対応しています。デバイスの供給者側(メーカー)からすれば、SIMフリーの1製品で全てのキャリアに対応すれば、製造や流通の効率化が図れるという側面もあります。とはいえ、たくさんの周波数帯(バンド)に対応し、それぞれ性能を発揮できるようにする事はとても難しいことです。
オーディオ機器で例えるなら、心に響くようなクリアな高音域から、ガツンとした低音まで幅広く出力できるスピーカーの価格が高くなるように、周波数帯(バンド)のサポートが多い端末は技術的にも難易度が高く、コストも割高になる傾向があります。
上記のような理由から、SIMフリーの通信機器の中には特定キャリアの主要な周波数帯(バンド)のみに対応を絞ることで、コストや開発難易度を下げることがあります。例えば、SIMフリーをうたう製品であっても、ドコモでの利用を想定しているモデルは他のキャリアのSIMカードを挿して使うとパフォーマンスが劣ることもありえる訳です。
では、一体どういった点に着目してSIMフリー製品を選べばいいのでしょうか。
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