2018年3月17日土曜日

[ITmedia ビジネスオンライン] パーツ取り付けもOK アマゾンがカー用品に注力するワケ

 アマゾンジャパン(Amazon)がカー用品に力を入れる。3月16日、新たな機能「Auto Parts Finder」の提供を始めた。Amazon上の専用ページ「Amazonガレージ」に自分の車を登録すると、その車にあったパーツに絞り込んで検索できる機能だ。

自分の車に合ったパーツを絞り込んで検索できる「Auto Parts Finder」

 Amazonは2009年に「カー用品ストア」を開始。タイヤやホイールなどの取り扱いを順次増やしていき、現在はおよそ1000万アイテムに上る。オートバックスグループや出光リテール販売など全国1万4000店舗と提携し、取り付け・交換サービスや車検も提供する。

 「Auto Parts Finder」の提供は、こうしたカー用品に対する「必要なパーツが何か分からない」という課題を解決し、利用者の利便性をさらに向上させるのが狙いだ。アマゾンジャパンの六車進 カー&バイク用品事業部長は、「カーライフサイクル全てに関わっていきたい。地球上で最大の品ぞろえを達成し、ドライバーのパートナーとなりたい」と意気込む。

 本機能は米国では04年にスタートしており、日本は10カ国目の提供になる。「品ぞろえや販売事業者が増え、提携の取付店も数が多くなっている。全ての環境が整った」(六車さん)。

必要なパーツを探し出すのが簡単になる

“環境が整った”一因「Amazon Business」

 「全ての環境が整った」――それほど品ぞろえを充実できた背景の1つには、17年9月にローンチした法人・個人事業主向けの購買サービス「Amazon Business」がある。これまで個人向けの商品を取り扱っていたAmazonだが、さまざまな業種・業態の企業のニーズに応えるために、B2B向けの商品も積極的に取り扱うようになった。

 Amazon Businessでは、企業や個人事業主がビジネスで利用する商品を、Amazon.co.jpのプラットフォーム上で購入できる。個人向けで使っていたプラットフォームで購買ができる利便性、請求書の一本化が可能になること、相見積もりが不要になること、購買の効率化が図れること――などが支持され、中小企業や個人事業主を中心に、アカウント数は順調に増えている。

 中でも利用が進んでいるのは大学・研究所。日本全国の大学の約25%がアカウントを登録しているといい、一般的な文房具のほかにも、実験器具や電子回路など独特の購買が目立つ。

 また、飲食チェーンやトレーニングジムなど全国で多店舗を展開している企業の利用も特徴的だ。提供する商品に関しては全店で統一できていても、備品などはそれぞれの店舗に任されており、備品の統一や購買活動の管理ができていないケースが少なくなかった。Amazon Businessではアカウント内にグループを作成し、店舗ごとの購買を“見える化”できる。そのため、本部の調達部が管理できる点が支持されているようだ。

 予想以上に需要があったのが自動車整備業。タイヤ、オイル、カーナビ、ドライブレコーダーなどのカー用品が人気だという。地域の小さな整備工場は、メンテナンス用品の在庫を潤沢に持っているわけではない。客の依頼に合わせてAmazon Businessに都度発注するという、“仕入れ先”としての利用が多い。作業で使う備品や作業着、スタッフに提供するお菓子なども買われている。

 アマゾンジャパンの星健一 ビジネス事業本部長は「B2Bの購買サービスを始めた時には、企業が買うものに対して固定観念があった。半年たって、企業はありとあらゆるものを買うことに気づいた。こうしたさまざまなニーズに応えて、『Amazonにしかないものがある』という状況を目指したい。たとえ1年に1個しか売れないニッチな商品としても、取り扱いラインアップにあることに意味がある」と話す。

 Amazon Businessの営業マンは「商品Aを取り扱っていないから、Amazon Businessは使わない」と企業から言われることがあるという。その場合Amazonは、販売事業者に営業をして商品Aの取り扱いを始めたあと、再び「Amazon Businessを使いませんか」と売り込みに行く。その繰り返しによって、販売事業者とAmazon Businessを利用する企業のどちらをも増やすことができている。

左:星健一 ビジネス事業本部長、右:六車進 カー&バイク用品事業部長

販売事業者との関係

 星さんは「B2Bの商品を扱っている小さい販売事業者は、簡単に拡販できないという課題意識を持っている。Amazon Businessを使ってビジネスを広げ、全国にいらっしゃるお客さんにアプローチしてほしい」と話す。

 Amazonのようなオンラインプラットフォームを活用すれば、小さい事業者にとってもビジネスのチャンスになる。その一方でリスクも生まれる可能性がある。Amazonは3月15日、値引きして売った商品の販売額の一定割合を「協力金」として納入元に請求していた疑いがあるとして、公正取引委員会の立ち入り検査を受けた。同社は「審査には全面的に協力させていただいている」とし、疑いについてはコメントしていないが、販売事業者にとってAmazonでの売り上げが大きくなればなるほど、こうした要求を拒みにくくなると予想される。

 販売事業者との関係が、Amazonのビジネスを支えている。星さんは立ち入り検査については「コメントはできない」としたが、「販売機会を増やす橋渡しをしていきたい。Amazon Businessは、いわば『B2B2B』のような、販売事業者から法人のお客さまをつなげるような構図になっている。法人・個人問わず、全方位的にAmazonとして貢献したい」と語った。

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