スマートフォンのテザリングはなぜ有料なのか? そんな不満を目にする機会が増えている。きっかけは、NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクの3キャリアが大容量プランを中心にテザリングを有料扱いにしたこと。
有料化を決めた当初、3社とも期間限定で無料キャンペーンを実施してきたが、キャンペーン終了間際になって「やっぱり有料なのか」「同じモバイル通信なのに、手段が違うだけで有料にするのはいかがなものか」「データ通信をどう使おうとユーザーの自由ではないのか」と物議を醸してきた。KDDIが予定通り2018年3月31日に無料期間を終了すると告知したことから、再びテザリング有料化の議論がヒートアップしてきた。
まずはテザリング有料化を巡る、3社のこれまでの流れを整理したい。
NTTドコモ
30GB〜100GBの「ウルトラパック」向けテザリングは、当初は2018年3月末まで無料とし、2018年4月から月額1000円(税別)が発生する予定だった。しかし2016年9月のウルトラパック提供開始から、ドコモのネットワーク設備に大きな影響が発生していないことから、無料期間を延長。延長期限は特に定めていない。
その他のプランではテザリングの料金は発生しない。
KDDI
20GB〜30GBの「スーパーデジラ」のテザリングオプション料金は月額1000円で、2018年3月31日までは無料としていたが、2018年4月以降は月額500円に改定する。
auピタットプラン・auフラットプランのテザリングオプションは月額500円で、2018年3月31日までは無料としていたが、予定通り2018年4月以降は月額500円の有料オプションになる。
その他プランのテザリング料金は以下の通り。
- スーパーカケホやカケホと組み合わせられるデータ定額は無料
- 旧LTEプランと組み合わせられる「LTEフラット」などは月額500円
ソフトバンク
20GB〜30GBの「ギガモンスター」と50GB〜100GBの「家族データシェア」のテザリングオプション料金は月額1000円で、2017年4月30日までは無料としていたが、無料期間を2017年7月31日までに延長し、料金は月額500円に値下げした。その後、KDDIに合わせて無料期間を2018年3月31日まで再延長した。
しかし、「テザリングを継続するか解除するかを決めるための猶予期間を設ける」(同社)べく、無料期間を2018年5月31日までに再々延長した。6月1日以降は、今度こそテザリングは有料になるようだ。
その他プランのテザリング料金は以下の通り。
- データ定額50GBは無料期間なしで月額500円
- データ定額ミニ 1GB/2GB、データ定額 5GB、データ定額S(4Gケータイ)は無料
- その他のプランは月額500円だが、加入から2年は無料
なぜテザリングが有料なのか? 各社の見解
そもそも、なぜ契約しているプランによって、テザリングが有料になる場合があるのか。各社の広報部に見解を聞いた。
ドコモ:ネットワークへの負荷を懸念
ドコモは「大容量プラン(ウルトラパック)を始めた頃から、テザリングによって、ドコモが想定している以上の通信トラフィックが発生した場合、ネットワーク機器に負担が掛かり、お客さまへの影響が大きくなることを懸念していた」と回答。「お客さまへの影響」とは、一部のユーザーが過度に通信をすることで、他ユーザーの通信品質が低下したり、ネットワークのコスト負担の公平性を担保できなかったりするという問題だ。また、トラフィック増によって回線増強を余儀なくされると、キャリア側のコスト増につながる。
ただ、現時点ではネットワーク設備に大きな影響を与えていないことから、無料化を継続している。auやソフトバンクに比べれば良心的な対応だが、「キャンペーン」という枠組みをやめたわけではなく、ドコモのさじ加減で、再びテザリングが有料になる可能性も残されている。
KDDI:有料にすることで基本プランが安価に
KDDIは、「従来のカケホとデジラのデータプランでは、基本料金にテザリングも含めていたが、大容量プランや新料金プラン(ピタットプランとフラットプラン)では、必要なお客さまのみに提供するオプションサービスに変更した。それにより、従来プランより安い料金で提供できている」と説明する。ピタットプランとフラットプランは、確かにギガ単価を見ると、従来のカケホとデジラ向けプランに比べると安い。しかしテザリングを無料にすると、この値段は実現できなかった、というわけだ。
その理由を聞くと、「テザリングはスマートフォン単体での通信とトラフィックのパターンが異なり、ネットワーク設備への負荷が高い」とのことだった。ドコモと同様、行き着くところは「他のユーザーへの影響」だが、ふに落ちない部分もある。
KDDIでは、ネットワーク混雑回避のために、直近3日間に6GB以上通信すると、場合によって通信速度を終日制限する措置を取っている。つまりテザリングであっても、この制限が適用されれば3日間で6GB以上の通信はできなくなるから、ネットワークへの負荷は抑えられるはず。KDDIは「3日だけでなく、月間の長いスパンで見ても負荷は高い」と言うが、プランの通信容量を月内にどう使おうと、ネットワーク設備には問題ないよう設計されているのではないだろうか。スマホ単体で月内の容量めいっぱいに通信する人も当然いるはずだ。
ソフトバンク:テザリングの品質を担保するため
ソフトバンクがテザリングを有料としている理由は、ドコモやKDDIとは異なる。同社は「Wi-Fi対応のPCやゲーム機などをアクセスポイントから利用するための料金で、テザリングを1つのオプションサービスとして提供している。テザリングで通信できることを試験して、オプションサービスとして成り立つことを保証している」とコメント。
前半の理由は禅問答のように感じたが、後半の、品質を担保したオプションサービスだからという理由は理解できる。実際、MVNOのサービスでは、端末によってテザリングを利用できなかったり、OSバージョンアップによって突如テザリングが使用不可になったりすることもある(あった)。ただ、1GB〜5GBのデータ定額と、同じくソフトバンクが提供する「Y!mobile」のテザリングは無料であることを考えると、この理由で納得できる人がどれだけいるか。
KDDIと足並みをそろえず、2018年5月31日まで猶予期間を設けたことに、ソフトバンクから“迷い”を感じる。事前告知を重視するなら、2018年2月〜3月中旬までに告知をすればよかったはず。ちなみにKDDIは、3月中旬にテザリング有料の告知メールを送っている(筆者にも届いた)。
1社が思い切って「うちは全プラン、テザリング無料にします!」と発表すれば、他の2社も追随せざるを得ない(はず)。3キャリアのテザリング有料化を巡る動きは、もう一波乱起こりそうな気がしている。
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