2018年3月20日火曜日

[ケータイ用語の基礎知識]第848回:IEEE802.11ax とは


次世代WLAN規格、最大9.6Gbpsへ

 2018年3月現在、最も普及している5GHz帯を使った無線LANの規格としては「IEEE802.11ac」が存在します。これに続く次世代の無線LAN規格が今回紹介する「IEEE802.11ax」です。

 「IEEE802.11ax」は2.4GHz/5GHz帯の両方をサポートし、これまで、Wi-Fiとも呼ばれるIEEE 802.11a/b/g/n/acとの下位互換性を持ちながらも、理論上、11ac(wave2で6.93Gbps)の約1.5倍に当たる約9.6Gbpsの最大伝送速度で通信できるものとなります。

 電気工学・電子工学技術の学会「IEEE」の「802委員会」が標準化を進めており、2019年には正式な規格になる予定です。2018年現在、標準化に先駆けて出されたドラフト版に沿った機器が既に先行して発売されている状況です。

多数のユーザーが存在しても実効通信速度を落とさない

 11axの技術的な特徴としては、変調方式が1024QAMまで使用できるようになっています。11acの256QAMと比べ、電波状況の良いときの通信が高速化されています。

 その他の技術的な面からいうと、端末1台と1つのアクセスポイントの間を高速化することにはそれほど重きを置いていません。

 11axの設計は、高効率無線LAN(High-Efficiency Wireless LAN)とも呼ばれています。その最大の特徴は、多数のユーザーが同時に存在する高密度の環境でも、ユーザー辺りの平均通信スピードを落とさないということになります。

 11axでは、複数端末との同時接続を可能にするMU-MIMO(マルチユーザーMIMO)を、アクセスポイント→端末への下り通信だけでなく、端末→アクセスポイントへの上り通信にも使用しています。MU-MIMOは、アクセスポイントから電波の飛ぶ方向を分散させて、衝突しないように、複数のデバイスが同時に通信できるようにします。これには、アクセスポイントの複数アンテナを利用して電波の高精度なビームフォーミングが必要となります。

 多重化方式にはLTEでも使われている「OFDMA」を使用することによって周波数の利用効率の向上を図っています。OFDMAでは、マルチパスのフェージング環境や屋外における堅牢性と性能を向上しています。

 そのほか、電波を流しているチャネルが使用中であるとみなす信号レベルの基準をダイナミックに変えることでスループットを改善させるDynamic Sensitivity Control(DSC)といった技術も採用されています。

 「最大速度」よりも「実効速度」の向上をめざすこれらの設計によって、11axは、多数のデバイスが集まる高密度環境下で、11acに比べてスループットを少なくとも4倍に高めることを目指しています。

IoTにも?

 11axのもうひとつの特徴としては、「使用エネルギーの効率化」が計られていることが挙げられます。このため、端末の送信出力をコントロールする機能が用意されています。つまり、弱い出力でも十分通信できるときには出力を抑えることで、省電力での通信を可能にするわけです。

 また、通信しない時の待機時間を長くするなど柔軟性を持たせており、消費電力を抑えられるようになっています。

 IEEE 802.11axという規格はパソコンやスマートフォンのバッテリー持ちを改善できる可能性があるだけでなく、IoTデバイスなどに搭載することも可能になるかもしれません。



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