アメリカのスマホ問題は他国よりも複雑で深刻。
アメリカでは、学校で携帯電話持ち込み禁止が過去のものになりつつあることが新たな調査で明らかになりました。
国立教育統計センターが行なった学内の犯罪と安全の調査によると、学校がスマホの持ち込みを禁止していた割合が、2009年には91パーセントだったにも関わらず、2016年には66パーセントに下がっており、かつてほど厳しく制限していないようなんです。
とはいえ、この動きはソーシャルメディアの利用にまで寛大になったというわけではありません。2009年と2010年には93パーセントの公立学校が学内コンピューターからSNSにアクセスすることを制限していましたが、2015年と2016年の調査でも89パーセントが引き続き利用を認めていません。
つまり、学内スマホ規制緩和は学生の要求が通ったからではなく、子どもの身の安全を心配する親のリクエストが背景にあるのです。ニールセン調査の結果でも、親は子どもと簡単に連絡が取れるように携帯電話を持たせたいと考えていることがわかっています。
スマホに関するポリシーの変化について、ミシガン大学教育学部のリズ・コルブ教授は米ギズモードに対し、メールで次のように答えています。
驚くことではありません。学校の安全性を懸念するようなニュースが増えていますから、子どもに携帯電話を持たせて通学させたいと考える親が少なくないのです。万が一のことが起こった場合、携帯電話が身を守るのに役立つと考えるのですね。すぐさま両親や機関に電話して助けを求めることができる、と
AP通信は、今年2月に発生した米フロリダ州の銃乱射事件で生徒が事件の真っ只中に携帯電話を使って助けを呼び、状況をシェアしあっていた例を挙げ、学内で緊急事態が発生した際に外部への連絡手段をもつことの重要性を訴えています。
携帯電話=子どものセキュリティという考えは親だけはないようです。事実、ニューヨーク市教育省は、2015年に携帯電話持ち込み禁止を撤廃し、携帯電話に関するポリシーは学校側が自由に設計できるようになりました。ちなみに禁止されているあいだ生徒たちはスマホを家に置いていくのではなく、学校近くの保管所で1ドル(約107円)支払って預かってもらっていたんだとか。ですが、このような変化もあり2016年には66パーセントまで落ちたのでしょう。
もちろん、今でもデバイスを禁止している学校はあります。前出のAP通信によると、2017年12月にコネチカット州の高校がソーシャルメディアやテキストメッセージでの「マナー違反」を理由に携帯電話を禁止していますし、最近ではコロラド州の中学校が授業中の携帯電話使用禁止を決めています。
スマホを全面的に禁止しているほとんどの学校は、授業の邪魔をされることがない、オンラインでのいじめを回避することができると主張しています。しかし公立高校の多くが急速に学内への携帯電話持ち込みを認めるようになっているのを見る限り、子どもの身の安全を心配する親からのプレッシャーに学校側が理解を示していることがわかります。
アメリカでは悲劇を再発させないために教師に銃の扱いを教えようとしたり、生徒に透明のバックパックを使わせるといったアイディアを採用したりしています。それと比較すれば、スマホOKのほうがはるかに現実的で合理的です。
ただ、真の安全を考えるなら銃を規制するのが1番の近道だと思います。そうすれば、サイバーイジメや授業妨害といったスマホのマイナス点だけにフォーカスしてポリシーを考えられますし、子ども達も安心して授業に集中できます。スマホポリシーがゆるくなった背景が銃乱射事件をはじめとする凶悪犯罪というのが考えさせられますね…。
Image: Maria Savenko/Shutterstock.com
Source: AP News
Melanie Ehrenkranz - Gizmodo US[原文]
(中川真知子)
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