Mobile World Congress(MWC)の取材は、2018年で10回目を迎えた。2009年に初めて参加して以来、毎年2月、3月は、スペイン・バルセロナに行き、MWCを取材するのが恒例行事になっている。当時はまだ日本から訪れるメディアの数も少なく、会場も現在とは異なり、エスパーニャ駅の目の前にある、フィラ・モンジュイックが使われていた。
間近に迫った5Gに沸く、2018年のMobile World Congress
こんな思い出話をしているのは、今回のMWCの雰囲気は、10年前に初めてこのイベントを取材したときのそれに近いと感じたからだ。当時は、まさにLTE開始前夜。2008年末には世界初のLTEサービスがスウェーデンで導入され、2010年末にはドコモが国内で「Xi」として、LTEのサービスを開始した。業界では、モバイルネットワークのインフラは、10年で世代交代を迎えるといわれているが、5Gの開始を2019年に控えた今年はまさにその端境期にあるというわけだ。
2019年には、北米など一部の国で5Gの商用展開がスタートする。その1年後には、日本でもドコモが5Gを開始することを明かしている。こうしたニーズをにらみ、MWCでは多数の5G関連製品が展示されていた。Huawei、Ericsson、Nokiaなどの通信機器ベンダーは、商用展開可能な基地局などの設備を出展。ドコモはもちろん、VodafoneやOrange、KTなど、主にアジアや欧州のキャリアも、ブースで5Gの活用例をアピールしていた。
ここ数年、MWCの主要トピックは5Gの色が濃くなりつつあったが、いよいよ商用化を目前に、具体的な姿が見え始めた格好だ。端末では、Huaweiが宅内に据え置くタイプのルーター(CPE)を、会期前日の2月25日(現地時間)に発表。発売時期や展開国は明かされなかったが、商用端末としては、これが初のお披露目となる。このルーターは、Sub-6(6GHz帯以下)とミリ波(28GHz帯など)の両方に対応。ミリ波で使う場合は、大型のアンテナを外部につなげる形が想定されている。
一方で、5Gは、開始時からスマートフォンも対応していく形になりそうだ。既にQualcommは、5G対応モデムの「Snapdragon X50」を搭載したレファレンスモデルを開発していたが、MWCでもこれを出展。28GHz帯を使い、4Gbps程度のスループットで通信する様子を確認できた。
ソニーモバイルやASUSのプレスカンファレンスには、同社社長のクリスティアーノ・アモン氏がゲストとして登壇。2社が、Qualcommの「RFフロントエンドソリューション」を採用していることを明かした。RFフロントエンドソリューションとは、モデムだけでなく、アンテナまでを統合してクアルコムが提供する仕組みのこと。バンド数や通信方式が増え、無線部分が複雑化しているが、Qualcommがこれをサポートすることで、メーカーは実装が容易になる。
ソニーモバイルやASUSの発表した端末は、Snapdragon 845を搭載した4Gのスマートフォンだが、5G時代の開発体制を見すえ、協力関係をアピールした格好だ。特に5Gでは、28GHz帯のような高い周波数帯を使うエリアもあり、小型のスマートフォンに実装する難易度は、4Gのころよりも格段に高くなる。こうした状況のため、メーカーにとってQualcommの重要度は上りそうだ。
既にSnapdragon X50はベンダーとの相互接続試験も終了しており、MWCを目前に控えた2月には、全19社のメーカーが採用を発表した。日本のメーカーでは、富士通コネクテッドテクノロジーズ、シャープ、ソニーモバイルが名乗りを上げており、ASUS、HTC、OPPO、LGエレクトロニクス、ZTEなど、日本市場と関係の深いメーカーもSnapdragon X50を選定した。これらのメーカーの端末は2019年以降に発売されるという。
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