IoTデバイスを開発・提供するソニー子会社のQrio(東京都渋谷区)が2月23日、官報に掲載した2017年3月期(16年4月〜17年3月)決算公告によれば、売上高は1億6800万円、経常損失は3億8000万円の赤字だった。累積の利益や損失の指標となる利益剰余金は7億1700万円の赤字。
Qrioは14年設立。スマートフォンから住宅などの鍵の施錠・解鍵ができるスマートロック「Qrio Smart Lock」や忘れ物を防げるスマートタグ「Qrio Smart Tag」などのIoTデバイスを開発・提供している。設立時はソニーとベンチャーキャピタルのWiLの合弁会社だったが、17年にソニーが完全子会社化した。
ここがポイント
17年3月期の決算公告によれば、流動資産1.9億円に対して流動負債6000万円と、当面の資金繰りは問題なさそうです。しかし業績は、売上高1.6億円に対して経常赤字は3.8億円。累積赤字は7.1億円で、資本金と資本準備金を合わせて9億円以上の減資を実施と、なかなかシビアな数字が並んでいます。特に赤字の内訳を見ると、売上高1.6億円に対して売上原価2.8億円で、売上総損失が1.1億円発生している状況なので、少なくともこの3期目の決算の段階ではビジネスとして成立しているとは言い難い状況です。
一方、事業展開を見ると、設立当初は「Qrio Smart Lock」を発売しスマートロック企業として、同じくスマートロックを手掛けるフォトシンスの「Akerun」や、ライナフの「NjinjaLock」と似たようなイメージも強かったQrioでしたが、16年には忘れ物防止スマートタグ「Qrio Smart Tag」、直近の18年2月には見守りサービス「Qrio ただいまキット」をリリースするなど、IoTデバイスからスマートホームへとメインターゲットを移してきている様子がうかがえます。
同様に、フォトシンスはオフィスや民泊物件の施錠管理、ライナフはスマート内覧といった不動産テックにターゲットを絞ってきています。これらの動きは各IoTベンチャーのビジョンと現実の擦り合わせの試行錯誤が見られて興味深いところですね。16年に盛り上がったスマートスピーカーやAI、ARやVRといったトレンドとの連携含め、IoTが1つのトレンドで終わるのか、あるいは“ポストスマホ”の本命に躍り出るのか、引き続き動向に注目です。
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《著者紹介》
平野健児。新卒でWeb広告営業を経験後、Webを中心とした新規事業の立ち上げ請負業務で独立。WebサイトM&Aの「SiteStock」や無料家計簿アプリ「ReceReco」他、多数の新規事業の立ち上げ、運営に携わる。現在は株式会社Plainworksを創業し「NOKIZAL」を運営中。
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