漫画・アニメの海賊版を配信する3サイトを指定し、政府がISPに自主的なブロッキングを促す「緊急対策」を決めたことが、波紋を広げている。
NTTグループのISPがブロッキングを行う方針を打ち出した一方で、ISPの業界団体からは「ブロッキングは通信の秘密の侵害に当たる」などと反発も出ている。また、「ブロッキングという法的根拠のない手段を取る前に、権利者はどこまで対策したのか」との疑問の声も上がっている。
権利者はこれまで、海賊版サイトにどのような対策を行ってきたのか。また、なぜ今回、数ある海賊版サイトの中から、「漫画村」「Anitube」「MioMio」を選んだのか。政府の知的財産戦略本部の会合で3サイトのブロッキングを提案した、コンテンツ海外流通促進機構(CODA)の後藤健郎代表理事に聞いた。
動画の侵害対策が発端 漫画村は「出版社が対応」
――CODAはどのような組織か。
音楽やアニメ、映画、ゲームなど日本のコンテンツの流通促進と海賊版対策のための組織で、2002年、経産省と文化庁の支援で設立された。海外で行われている日本のコンテンツの著作権侵害に対して、削除依頼を行ったり法的措置を執るなどの活動を進めてきた。
当初はCDやDVDなど物理メディアを対象にしていたが、09年ごろからオンライン上の動画の著作権侵害対策を始め、「自動コンテンツ監視・削除センター」を運用している。権利者が動画サイトで自社コンテンツを見つけた場合、元動画のデータ提供してもらい、CODAがフィンガープリントを作成し、動画サイトのコンテンツと照合する。マッチングすれば、まとめて削除依頼を行う。
現在は、放送中に放送内容がリアルタイムでネットに無断アップされることもあるため、放送中からフィンガープリントを作成する「エア受け」を行い、放送終了と同時に動画サイトにクロールをかけている。動画だけでなく音声もマッチングすることで、画角などが変えられていても認識できるようにしている。
「youku」や「tudou」など中国の大手4大動画サイトに対しては、著作権を管理する中国当局「国家版権局」と交渉し、行政指導してもらったこともある。11年には4大サイトと、「正規版の許諾をCODAが取るので、著作権侵害コンテンツを削除するように」という内容の覚え書きを締結し、侵害コンテンツの削除率が向上した。
――漫画海賊版サイトの対策も行っているのか。
14年からは、漫画やアニメをユーザーが無許諾で投稿するUGCサイトに対して大規模削除を依頼し、正規版サイトに誘導するプロジェクト「MAG(Manga-Anime Guardians) PROJECT」の事務局も担ってきた。
15年、中国の漫画の違法アップロードサイト「愛漫画」の運営者が逮捕された事件では、使用許諾を行っていないことを日本の出版社から確認し、通知書を取りまとめ、事件を扱っていた中国成都市公安局に提出するなどの捜査協力も行っている。「フリーブックス」(漫画・書籍の海賊版サイト。2017年5月に閉鎖)については、Googleに対して、DMCAに基づく検索結果の削除要請を行った。
――「漫画村」に対してはどうか。
漫画村は、個別の出版社が削除依頼などの対応を行っている。CODAは出版社から情報共有を受けている。
なぜ「Anitube」「MioMio」「漫画村」なのか 「特に悪質」の根拠
――日本のアニメなどを無断で掲載している海賊版動画サイトは多数あるが、今回CODAは、「Anitube」と「MioMio」の2サイトを「特に悪質なサイト」として、ブロッキング対象に提案した。海賊版動画サイトがほかにもある中、なぜこの2サイトなのか。
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