一部の国では、2019年の商用化を控えていることもあり、2018年のMobile World Congress(以下、MWC)は、「5G」一色の様相を呈していた。基地局やコアネットワークは、商用設備が展示されていた他、端末もレファレンスモデルで動作をデモするブースが多かった印象だ。
2020年に5Gを開始するドコモも、5Gを大々的にアピールしていた1社だ。同社はロボットの遠隔操作による書道や、ジオラマとARの映像を連動させる「ジオスタ」などを出展。欧州で好まれる“和”を打ち出した展示が多かったこともあり、例年を大きく上回る来場者を集めていた。
そんなドコモの吉澤和弘社長に、MWC会期中にお話を聞くことができた。吉澤氏には、ドコモの5Gに向けた取り組みをはじめ、導入が期待されているRCS(リッチコミュニケーションサービス)などの話を聞いた。
5Gのユースケースがかなり出てきた
―― 最初に、今年のMWCで感じた印象をお話ください。
吉澤氏 展示を見る限りでは、5Gのユースケースがかなり出てきた印象があります。去年(2017年)もそれはありましたが、今年は非常に多い。特に自動運転やコネクテッドカーを結び付けたケースが出てきていますし、それだけではなく、建設機械(に5Gを導入する)のようなケースもありました。遠隔医療の話もあります。そういったところに、5Gは確実に応用できる。今回は、それを感じました。
ただし、どちらかというと、C(コンシューマー)向けはあまりなく、産業との連携の中で5Gを活用したビジネスをどう創出するかというものが強く出ています。そうは言いながら、私もGSMAのボード(メンバー)ですが、そこでの5Gに関する考え方は、(国によって)二極化しているようにも見えます。日本、韓国、中国、米国は5Gに関してかなりポジティブで、ユースケースも前向きに考えています。
一方で、少し消極的なオペレーターもいます。なぜかというと、5Gはすごく投資が掛かり、それを回収するのはとてもじゃないができない。しかもユースケースが見当たらないと考えているようです。展示会ではこれだけユースケースが出ていますが(笑)。電波の問題もそうですが、オークションコストが掛かり、インフラとしての光の伝送コストなどが整っていない地域では、かなり心配されています。
―― C向けが少ないというお話でしたが、現状の契約者数を考えると、やはりコンシューマーに浸透させていく必要もあると思います。この点はいかがでしょうか。
吉澤氏 エンターテインメントは、やはりコンシューマー(向け)ではないでしょうか。ドコモも視聴スタイルを変えていくということで、代々木のプロジェクションマッピングやPerfumeのパフォーマンスをやっています。会場にいかなくても遠隔地で見られるというようなものは、コンシューマー向けに提供すればマネタイズできる領域です。
スポーツ、音楽や、フォーミュラニッポンのジオスタもそうですが、間に興行主が入って、結果的にお金をいただく。直接ドコモがコンシューマーに何かをやるという事例は少ないかもしれませんが、dTVのようなもので配信するといったことは出てくるかもしれません。
東京五輪の会場には当然5Gを入れる
―― ドコモは、2020年に導入するというお話ですが、タイミング的にはオリンピックと同時にということでしょうか。
吉澤氏 オリンピックのスタートに合わせてローンチするというわけではありません。確かにトリガーではありますが、まだ何月とは言っていませんからね(笑)。ただし、オリンピックには当然間に合わせます。
―― ということは、上半期にはというところですね。最初はどういったところから始めていくのでしょうか。また、まだ割当は先になりますが、周波数帯はどうお考えですか。
吉澤氏 オリンピックの会場には、当然入れるつもりです。今、ユースケースが出てきているところにも入っていくでしょう。例えば、コマツさんは今だとWi-Fiを使いながらやっていますが、Wi-Fiだとなかなか遠隔操作ができきれないところがあります。場所にもよりますが、遠隔利用のようなものも、ローンチの時点でいくつかできているところがあると思います。ニーズのあるところに、必要な機能、必要な周波数を入れていきます。
―― 5G端末を持ち込めば、オリンピック観戦がもっと楽しくなるというのは、訴求力があるかもしれません。
吉澤氏 そういった端末を会場で貸し出したり、会場に据え付けたりすることで、面白い競技の見方ができるようなことは、考えていきたいですね。海外の方が5G端末を持ってくることは難しいでしょうから、会場でという形がいいかもしれません。
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