2018年3月24日土曜日

男性用避妊ピル、臨床実験結果は良好


これで、責任をふたりで分担できる日も近くなりますね

男性用避妊ピルとして期待を持たれている薬品のひとつは、現在女性が1日1回摂取する避妊ピルとほぼ同じ性質のものです。先日、毎年行なわれる内分泌学会で発表された臨床実験の結果によると、その薬品-Dimethandrolone Undecanoate(DMAU)-は人間の被験者にとって安全で効果的になりうるとわかったそうです。

研究者たちはDMAUを、18才から50才までの健康的な100人の被験者に与えました。被験者は異なる量のDMAUを、ひまし油、またはパウダーと共に入ったカプセルで経口摂取しました。摂取量によって分けられたグループの中で、それぞれランダムに選択された5人はプラセボ対照のための偽薬を与えられました。約1ヶ月間行なわれた実験中、被験者は1日1回、食べ物と一緒にカプセルを摂取するよう伝えられ、結果として83人が最後まで摂取しきったそうです。

実験が終わるころには、DMAUを摂取していた被験者はテストステロン、及び精子の生成に必要なホルモン2種類が低下し、それは摂取量が一番多かったグループにもっとも顕著だったそうです。ただし、低下したホルモンが精子の数を大幅に減らすようになるには3ヶ月ほどかかるため、今回の実験では精液そのものは検査されませんでした。しかしながら研究者によれば、摂取量が多いグループのホルモンレベルは、それまでの男性用避妊治療の研究で不妊状態になると判明しているレベルにまで下がっていたそうです。また、全てのDMAU被験者のホルモンレベルは、治療を止めて1ヶ月後には元に戻っていたそうです。

主任執筆者であり、ワシントン大学の薬学部教授であるStephanie Page氏は「男性用避妊ピルの開発に向けて大きな一歩です。研究結果に私たちは興奮しています」とメディアカンファレンスで語ります。

今回の研究は、ワシントン大学とカリフォルニア大学ロサンゼルス校の共同研究でした。

彼らによると、DMAUは、それまでの男性用避妊ピルの研究に立ちはだかっていた障害を乗り越えるためにデザインされたそうです。これまでの主なアプローチは、プロゲスチンとテストステロンを併用するというものでした。プロゲスチンによって精巣が精子を作り出すのを止めることで精子の数を減らし、同時にテストステロンを投入することで、体内のテストステロンが低下しすぎて起こる症状を抑えるという仕組みです。これにより可逆的不妊状態を作り出せますが、テストステロンを経口摂取するのは簡単ではありません。

テストステロンのピルを使った今までの実験では、経口による吸収率の悪さから、最低でも1日2回の摂取を必要としていました。しかし、一度にテストステロンを摂取しすぎると肝臓に負担がかかったり、気分変動といった副作用が起こってしまうのです。もっとも最近に行なわれた大規模な実験は2016年で、テストステロンを元とした避妊薬の注入実験は早期に中止せねばならなくなりました。というのも、被験者の男性数人が深刻な感情的副作用を報告した上、一人が自殺してしまったのです(一応記しておくと、ほとんどの被験者は、もしその薬品が市場に出回れば、それでも治療を受けると回答しています)。

DMAUはテストステロンやプロゲスチンと同じ受容体に作用します。しかし体により簡単に吸収され、しかもより長く持続するようなのです。これはつまり、理論上では1日1回の(食べ物と一緒の)摂取によって、深刻な副作用なく不妊状態を作りだすことができるはずだ、と著者たちは説明します。

「私たちにとってもっとも重要な結果は、有害な副作用や兆候がまったく見られなかったということです。被験者は薬を非常にうまく受け入れることができました。経口薬によく見られる吐き気などの副作用もなく、肝臓への負担も見受けられませんでした」とPage氏。

いくつか研究チームが確認できた副作用は、体重の増加やHDLコレステロール(いわゆる善玉コレステロール)の低下などでした。しかし、それらは摂取量を調整することで回避できる症状だと彼らは考えています。重要なのは、テストステロンの低下によって起きるはずのその他の長期的な症状がなかったことです。治療を受けたうち8人が性欲の低下を報告しましたが、治療を止めた後には徐々に回復していったそうです。

現時点で、この未だ出版されていない研究結果は、唯一の希望です。研究チームは現在、3ヶ月間に渡る試験、つまり精子の数を数えることで直接的な影響がわかる期間を使った試験を行なっています。ここで問題なく試験が終了すれば、次はDMAUを実際のカップルで試すことになります。

また研究者達は、人間での最初の試験を通ったもうひとつの経口避妊薬も調査しており、こちらは別の化合物ですが、同じように食べ物と一緒に摂取する形になります。

市場に男性用の避妊ピルが出回る日も、意外に遠くないかもしれませんね!



Image: Shutterstock
Source: ENDO 2018

Ed Cara - Gizmodo US[原文
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