2018年2月26日月曜日

[法林岳之の「週刊モバイルCATCH UP」]「iPhone×春商戦」、大手キャリアとMVNOのキャンペーンは


 国内で各携帯電話事業者がもっとも力を入れるとされる春商戦。その主力モデルとして扱われているのがアップルのiPhoneだ。今や国内で半数近いシェアを持つiPhoneだが、各携帯電話会社やアップルの取り組みなどについて、今一度、チェックしてみよう。

もうひとつの「10年という節目」

 国内で半数近いシェアを持つiPhone。昨年、初代モデルが米国で発売されてから節目となる10年を迎え、次の時代を目指したモデルとして、「iPhone X」が発表された。これに対し、国内市場は今年、2008年にソフトバンクが「iPhone 3G」を発売してから10年を迎える。

 発売当初、国内市場はケータイが圧倒的な主流で、スマートフォンへの期待はあったものの、モバイル業界での実力が未知数だったアップルが開発したiPhoneに対して、懐疑的な見方をする人が多かったのも事実だ。特に、国内市場は各携帯電話会社の支配力が強いとされ、筆者自身も含め、多くの関係者が「勝ち目がない」と考えていた。

 あれから10年。今や各携帯電話事業者が一年でもっとも力を入れるとされる春商戦において、iPhoneは主力モデルとして扱われるようになり、これまでiPhoneを扱っていなかったMVNO各社もさまざまなルートを通じてiPhoneを取り扱うなど、さらに国内市場への攻勢を強めそうな構えだ。

 当初「勝ち目がない」とされたiPhoneが国内市場でこれだけ普及したのは、やはり、iPhoneそのものが着実に進化を遂げてきたことが挙げられる。たとえば、ハードウェアでは指紋センサーのTouch IDやLTEネットワーク対応、nanoSIMなど、新しい技術をライバル製品と先を争うように採用し、市場をリードしてきた。国内で販売されるスマートフォンの多くは、ケータイ時代の機能を継承し、おサイフケータイや防水といった機能をアドバンテージとしてきたが、これらの日本仕様と言われた機能もiPhone 7/7 Plus以降、サポートされ、変わらない利用環境を提供している。

 また、新モデルがリリースされる度に、話題となる機能やサービスを提供してきたことも人気の秘密と言えるだろう。前述のFeliCa搭載や防水防塵対応はもちろんだが、iPhone 7 Plus以降では業界のトレンドであるデュアルカメラをいち早く搭載したり、iPhone XではFace IDと呼ばれる新しい顔認証を採用するなど、新モデルを購入したユーザーが友だちや家族と共に、試してみたくなるような機能をサポートしている。こうした話題作りは他製品も取り組んでいるが、わかりやすさ、つかみの良さという点では、やはり、iPhoneがリードしていると言えそうだ。

 こうした話題性が生み出すユーザー間の広がりもiPhone普及の原動力だと言われる。iPhoneは元々、ホームボタンのみのシンプルなユーザーインターフェイスや優れたユーザビリティが特徴とされているが、シンプルであるがゆえに、すでにiPhoneを使っているユーザーが友だちや家族などに説明しやすく、わからないことがあってもサポートしやすいという状況を作り出している。昨年発売されたiPhone Xはホームボタンを廃止するなど、ユーザーインターフェイスを大きく変更したが、従来モデルからの流れをくむiPhone 8/8 Plusは変わらぬ使いやすさを保持しており、従来モデルのユーザーも買い換えやすい。

 端末の買い換えは新しい機種が使えるという楽しさもある半面、古い機種から新しい機種へのデータの移行という手間があり、誰もがストレスに感じてしまうものだ。しかし、この部分についてもiPhoneは初期のモデルから移行しやすい環境を整えており、それが他機種への移行を防ぐことができたという見方もある。よく知られているように、iPhoneはパソコンで動作するiTunesと同期すれば、バックアップを取ることができ、そのバックアップを新しい機種に復元すれば、ほぼ同じ環境が再現される。移行されるデータに一部制限はあるが、パソコンがないときはiCloudのバックアップから復元した場合でも同じように元の環境が再現される。こうしたiPhoneの状況を鑑みてか、最近では国内外のAndroidスマートフォンもメーカー独自の移行環境を用意したり、GoogleがAndroidプラットフォーム標準の移行機能を提供するなど、他製品も移行しやすさに配慮し始めている。

 そして、こうした端末の進化やユーザー同士による広がりなどとは別に、もうひとつ見逃せないのは、各携帯電話会社をはじめ、モバイル業界の各社がさまざまな形で、iPhoneの販売や普及を後押ししてきたことが挙げられる。

 たとえば、各携帯電話会社は新しいiPhoneの発売日に発売イベントを催したり、販売面では手厚い端末購入補助によって、世界でもっともiPhoneが安価で買いやすい環境を提供するなど、積極的にサポートしてきた。最近では需要が一段落した感もあるが、フィーチャーフォンからの移行については、各携帯電話会社が積極的にサポートしてきた印象だ。すべてのデータが移行できたわけではないが、連絡先などは各社が移行ツールを提供したり、店頭で移行するためのハードウェアを準備して、対応してきた。購入時のサポートもかつては数枚の書類を手渡される程度だったが、現在は各社が移行から初期設定までを解説した冊子を用意しており、はじめてのユーザーでも移行しやすい環境を整えている。

例年iPhoneの発売日には3キャリアが発売記念イベントを実施している
(写真は2017年のiPhone 8/8 Plus発売時のもの)

各携帯電話会社の春商戦への取り組み

 iPhoneそのものの進化、アップルや各携帯電話会社の取り組みなどによって、国内で半数近いシェアを獲得したiPhoneだが、今年の春商戦でも各社が主力モデルとして扱い、さまざまなキャンペーンを実施するなど、積極的にプッシュしている。価格面については各社でそれほど大きな差があるわけではないが、それぞれのの取り組みや特徴について、チェックしてみよう。

NTTドコモ

 主要3社のうち、もっとも後発でiPhoneを扱い始めたNTTドコモだが、最大のシェアを持っていることもあり、2013年のiPhone導入以来、着実にユーザーの利用環境を改善してきた。今シーズンの学割のキャンペーンでもiPhoneを前面に押し立て、12カ月の継続契約を条件に購入代金の一部を割り引く端末購入サポートにiPhone8やiPhone 8 Plusを追加するなど、春商戦では積極的にiPhoneをプッシュしている印象だ。

 また、NTTドコモの場合、dマガジンやdTVなどのコンテンツサービスが充実しており、これらのサービスの利用を機にNTTドコモでiPhoneを契約するというケースもあるようだ。2月23日からはサッカーのJリーグが開幕するが、これを機に、iPhoneでDAZN for docomoを楽しむのも面白そうだ。

au

 auのiPhoneと言えば、LTEネットワークへの対応をはじめ、キャリアアグリゲーションによる高速化、VoLTEへの対応など、iPhoneの通信環境の充実に積極的に取り組んできた印象が強い。また、はじめてでも手軽に海外ローミングが安心して利用できる「世界データ定額」、面倒な設定をせずにWi-Fiに接続できる「au Wi-Fi SPOT」など、ユーザーの実用環境が充実しており、iPhoneについてもしっかりと対応が取られているのもユーザーとしてはうれしいところだ。

 auは昨年、販売奨励金を適用しない代わりに、割安な料金で利用できる「auピタットプラン」「auフラットプラン」を発表。当初はiPhoneを対象外としていたが、iPhone 8/8 Plusが発売された昨年9月からはiPhoneでも契約できるようになり、順調に契約数を伸ばしているという。さらに、新しいiPhoneでも1年後に機種変更できる「アップグレードプログラムEX(a)」も昨年9月からスタートさせている。元の機種は回収されることになるが、iPhoneのように、毎年、ほぼ定期的に新モデルが登場する機種では、このプログラムに加入しておくことで、少ない負担で新モデルに機種変更できる。

ソフトバンク

 国内ではiPhoneをもっとも早くから取り扱い、iPhone向けのサービスや機能を常に拡充してきたのがソフトバンクだ。iPhone向けのサービスや販売施策も同社がいち早くスタートさせたものを他社が追随するケースが多く、最近ではiPhone 7/7 Plus発売時にスタートさせた大容量プラン「ギガモンスター」、iPhone 8/8 Plus発売時にこれを進化させた「ウルトラギガモンスター」などが記憶に新しい。今シーズンの春商戦でも新たに学生だけでなく、学校の先生も学割の適用を受けられる施策を打ち出したり、家族割引も離れて暮らす家族、同居するパートナーや友人も含めるようにするなど、新しい切り口の取り組みが注目される。

 iPhoneについてはさまざまなサービスやキャンペーンを展開してきたが、年に何度か米国出張がある筆者のようなユーザーには、iPhoneのみで米Sprintのネットワークを国内とほぼ同額で利用できる「アメリカ放題」が非常に重宝している。ただ、それ以外の国と地域については、従来通りの海外パケットし放題のみなのが残念なところだが……。また、できるシリーズで各社向けのiPhoneの書籍を何冊も執筆しているが、実はソフトバンクだけのMMSだけがほぼ設定不要で利用できるようにしているなど、はじめてのユーザーにもやさしい環境を整えているのは評価できる点と言えるだろう。

MVNO各社及びサブブランド

 国内ではソフトバンク、au、NTTドコモの順にiPhoneの取り扱いが拡大していったが、ここ数年、MVNO各社やサブブランドでもiPhoneを取り扱うケースが増えている。ただ、主要3社のように最新のiPhoneを扱っているのではなく、リーズナブルな価格帯のiPhone SE、旧機種のiPhone 6s/6s Plusのメーカー整備済み品やリファービッシュ品などが販売されている。また、mineoのように、比較的新しいiPhone 7/7 Plusを取り扱うようなケースも出てきている。iPhone 7/7 PlusはiPhone 6s/6s Plusに比べ、防水防塵やFeliCaなどの違いがあり、ある程度、長く使うことを考える意味でもアドバンテージは大きいとされる。これらのMVNO各社やサブブランドが取り扱うiPhoneも各携帯電話会社が販売するiPhoneと同じように、アップルの補償サービス「AppleCare+ for iPhone」に加入できることが多く、安心して利用できる環境を整えている。

キャンペーンを利用して上手に新機種に

 国内市場でもっとも新規契約や買い換えが多いと言われる春商戦。なかでもiPhoneは国内で半数近いシェアを持ち、はじめてのユーザーにも扱いやすいと言われていることもあり、幅広いユーザーから関心を集めている。こうした状況に対し、各携帯電話会社はさまざまなキャンペーンを展開し、さらにMVNO各社やサブブランドなども参戦し、今まで以上に各社の販売競争が激しさを増している。かつてのような「過度なキャッシュバック」はないとされているが、今まで以上に買い換えやすい環境が整っていることは事実だ。各社のキャンペーンの適用条件などを見ながら、自らのiPhoneをどうするのかを検討してみるといいかもしれない。



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