2018年3月12日月曜日

[ITmedia エグゼクティブ] キッコーマンの“鮮度保つしょうゆ”なぜヒットした? 実は宇宙でも需要

伝統調味料を現代に合わせ革新

しょうゆの酸化を防げる「二重構造ボトル」を使った商品群。ラベルを剥がすと仕組みがよく分かる(手前右)

 スーパーの調味料売り場の色合いを、「黒から白に染め変えた」といわれる商品がある。キッコーマン食品の「いつでも新鮮」シリーズだ。発売は2010年。新構造の容器で風味の劣化を防ぎ、それまで大規模に出回っていなかった「生しょうゆ」を広めた点が画期的だった。押しも押されもせぬ定番商品へと育ったのは、少人数世帯が多くなり、また、より繊細な味付けが好まれるという現代の食卓事情にマッチしたからだ。

二重構造ボトル開発

 しょうゆの新鮮さを保つ同商品の秘密について、「ラベルを剥がせば一目で分かるはず」と説明するのは、同社プロダクト・マネジャー室の塚本崇さん。本体ボトルの内部に、しょうゆを詰めた別の袋が納まっている二重構造が見て取れる。

 蓋の部分には、しょうゆを注いだ際に空気が「袋」に入らないようにするための弁と、逆にしょうゆが減った分だけ「ボトル」の内部に空気を吸い込むための弁が付いている。この仕組みにより、しょうゆが容器内で空気に触れて酸化し、風味が落ちるのを防げるようにした。鮮度を保てる期間は、開栓後90日。一度買ったしょうゆをなかなか使い切らない単身者や少人数世帯には、とりわけありがたい機能だ。

 同社が二重構造ボトルを開発したのは「フレッシュなしょうゆを求めるニーズに応える狙いがあった」と、塚本さんは説明する。

 しょうゆといえば、加熱して微生物を取り除く「火入れ」を経たものが定番。この工程によってしょうゆの色が濃くなり、香りも強くなる。

 一方、加熱しない生しょうゆは鮮やかな色と軽やかな風味が持ち味だけに、火入れしょうゆ以上に味が落ちやすく、大規模に流通させるのは難しかった。

 「昔は濃い味付けで素材を『マスキング』する傾向が強かったが、今日では素材自体の風味を生かす味わいが好まれるようになり、生しょうゆの潜在需要が広がっていた」と塚本さん。そこで鮮度を保てる二重構造ボトルを開発し、あまり出回っていなかった生しょうゆを大々的に売り出したというわけだ。

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