2018年3月31日土曜日

[法林岳之の「週刊モバイルCATCH UP」]3つのセンサーで史上最強のカメラを実現した「HUAWEI P20 Pro」


 ファーウェイは3月27日、フランス・パリでイベントを開催し、同社のフラッグシップモデル「Pシリーズ」の最新モデルとなる「HUAWEI P20」「HUAWEI P20 Pro」、PORSHE DESIGNとのコラボレーションモデル「HUAWEI PORSHE DESIGN Mate RS」を発表した。本誌では発表会の様子を速報記事でお伝えしたが、HUAWEI P20 Proのデモ機を試すことができたので、ファーストインプレッションをお伝えしよう。

スマートフォンのカメラを進化させてきたファーウェイ

 現在のスマートフォンにとって、もっとも重要な機能のひとつと言えるのがカメラだ。ケータイ時代から国内外で進化を遂げてきたカメラだが、スマートフォン時代に入り、SNSでのシェアなど、さまざまなシーンで利用されるようになり、一段と重要な機能のひとつとして、認識されるようになってきた。

 そんなスマートフォンのカメラにおいて、ここ数年、大きく進化を遂げる要因のひとつとなったのが複数のイメージセンサーを組み合わせたデュアルカメラだ。一般的なデジタルカメラはイメージセンサーを1つのみ搭載しているが、スマートフォンのデュアルカメラではコンパクトなボディに2つのセンサーを搭載し、独自の画像処理機能などを加えることで、これまでのスマートフォンのカメラでは難しかった高品質な写真や独特のテイストを持つ写真を撮影できるようにして、急速に人気を高めている。

 そのデュアルカメラの先駆者であり、新しい方向性で市場をリードしてきたのは他でもないファーウェイだ。2015年5月に発売した「honor 6 Plus」で初搭載したのを皮切りに、2016年6月にはドイツの老舗光学機器メーカー「Leica」と共同開発したダブルレンズカメラを搭載した「HUAWEI P9」、2017年6月には後継モデルの「HUAWEI P10」「HUAWEI P10 Plus」、2017年12月には初のAI対応を実現した「HUAWEI Mate 10 Pro」を発売するなど、スマートフォンのデュアルカメラのトレンドを牽引してきた。最近ではリーズナブルな価格帯の製品にも展開することで、デュアルカメラがファーウェイのカメラの強みとして認識されるようになってきた。

 なかでもLeicaとの協業によるダブルレンズカメラは、モノクロセンサーとカラーセンサーを組み合わせるという独自の手法により、これまでのスマートフォンでは実現できなかったダイナミックレンジの広い写真の撮影を可能にし、一眼レフカメラなどを愛用するような厳しい目を持つユーザーからも高い評価を得ていた。

 そして、今回のイベントでは「HUAWEI P20」「HUAWEI P20 Pro」「HUAWEI PORSHE DESIGN Mate RS」が発表された。それぞれのモデルの詳細については、本誌の速報記事を参照していただきたいが、いずれもカメラに注力したモデルであり、発表時のプレゼンテーションでもカメラ機能の説明に多くの時間が割かれていた。今回発表された3機種の内、HUAWEI P20 ProとPORSCHE DESIGN Mate RSは初のトリプルカメラを搭載したモデルとなっており、今回のイベントの予告にも使われていた「SEE MOOORE WITH AI」というキャッチコピーの「O」が3つあることを裏付けるものだった。

 発表会の終了後、タッチ&トライの時間にそれぞれの実機を試すことができたが、それに加え、HUAWEI P20 Proのデモ機をお借りすることができた。グローバル版は日本の技術適合認証を受けていないため、パリ滞在時の短い時間に限られるが、ここでは製品の内容を説明しながら、実際の使用感などをお伝えしよう。ちなみに、今回、試すことができた製品は、グローバル版の出荷直前のモデルであり、実際の製品とは差異があるかもしれない点はお断りしておく。同様に、製品の内容などについても現時点で明らかになっている情報などが中心となることもご理解いただきたい。

6.1インチフルHD+対応OLEDディスプレイを搭載

 ファーウェイが販売する端末ラインアップにおいて、これまでMateシリーズが大画面、大容量バッテリーをセールスポイントとしていたのに対し、PシリーズはMateシリーズよりもコンパクトなボディで、カメラ性能を追求したモデルという位置付けだった。2017年、国内向けに発売されたP10シリーズでは、5.1インチのフルHD対応液晶ディスプレイを搭載した「HUAWEI P10」、5.5インチ2K対応液晶ディスプレイを搭載した「HUAWEI P10 Plus」がラインアップされていた。

 今回発表されたHUAWEI P20シリーズは、HUAWEI P20が5.8インチの液晶ディスプレイ、HUAWEI P20 Proが6.1インチのフルHD+対応有機ELディスプレイをそれぞれ搭載しており、どちらのモデルも従来モデルに比べ、ひと回りサイズが大きくなっている。ただし、解像度については両機種ともフルHDクラスとなっており、P10 Plusの2K対応ディスプレイよりも解像度が抑えられたことになる。

 また、本体前面の特徴のひとつともなっているのがディスプレイ上部に切り欠き(ノッチ)がある点だ。このデザイン処理は昨年、iPhone XやAQUOS R Compact、Essential Phoneなどで採用され、その後、各社が同様のデザインを採用してきたが、P20シリーズはディスプレイの仕様が液晶ディスプレイと有機ELディスプレイという違いがありながら、同じようにノッチを付けており、デザインのアクセントとしている。ちなみに、Androidプラットフォームはこうしたノッチのデザインを最新版でサポートしており、HUAWEI P20 Proでは設定を変更することで、ノッチ部分を隠すこともできる。このノッチ部分にはセンサー、フロントカメラ、レシーバーが内蔵されている。

 本体の右側面には音量キーと電源キー、左側面にはトレイ式のデュアルSIMカードスロット、下面にはUSB Type-C外部接続端子、上面には赤外線通信ポートを備える。基本的なレイアウトは昨年のMate 10 Proなどと変わらないが、従来モデルのユーザーは3.5mmイヤホンマイク端子が廃止されていることに注意が必要だ。代わりにパッケージにはUSB Type-C接続のイヤホン、USB Type-C変換アダプタが同梱される。

 6.1インチという大画面のディスプレイを搭載しながら、ボディ幅は73.9mmに抑えられており、長さも従来のP10 Plusとわずか1.5mmしか違わない155mmに抑えられている。厚さも7.8mmとスリムだが、後述するカメラ部が突起しており、カバーなどを装着して利用することが推奨される。ボディカラーは両機種ともBlack、Twilight、Pink Gold、Midnight Blueの4色がラインアップされているが、TwilightとPink Goldについては特別なグラデーション仕上げが施されるほか、HUAWEI P20にはChampagne Goldも用意されるという。実際の仕上がりも非常に美しいが、発表会の写真などを見てもわかるように、かなり光沢感が強く、手で触った跡なども目立ちやすい。

 手にしたときの全体的なイメージは、やはり、FullViewディスプレイの大きさ、上部のノッチなどが目立ち、他の縦長ディスプレイのスマートフォン以上に、ディスプレイそのものを持ち歩いているような印象を受ける。ディスプレイの下には指紋センサーが内蔵されており、画面ロック解除に利用できるほか、指紋センサー部分のタップやロングタップ、スワイプなどの操作により、Androidプラットフォームのナビゲーションキーの機能を割り当てることもできる。ちなみに、認証については顔認証にも対応しており、画面を見るだけでロックを解除することもできる。認識のスピードも非常に早いうえ、見るときの角度もそれほどシビアではないため、かなり快適に利用できる。

 チップセットはHUAWEI Mate 10 Proにも搭載されたAI対応のKirin 970が採用され、6GB RAMと128GB ROMを搭載する。microSDメモリーカードなどの外部メモリーには対応していない。プラットフォームはAndroid 8.1がプリセットされる。動作はタッチパネルのレスポンスなども良く、非常に快適に使うことができる。

 ボディはスリムに仕上げられているが、本体には4000mAhという大容量バッテリーを内蔵してしており、付属のACアダプタを利用することで、バッテリーが空の状態から、30分で58%まで充電できるHUAWEI Super Chargeに対応する。昨年発売されたMate 10 ProはチップセットのAI対応を活かした省電力性能の最適化の効果もあり、従来よりもバッテリーライフが長くなった印象だったが、チップセットとバッテリー容量が同じHUAWEI P20 Proは同等の性能が期待できる。短い時間の試用だったが、バッテリー残量の減りはかなり緩やかな印象だった。

 本体はいずれも防水防じんに対応するが、機種によって、少し仕様が異なり、HUAWEI P20 ProはIP67対応を謳っている。ちなみに、多くのファーウェイ製端末同様、パッケージにはカバーが同梱される予定だが、今回試用したパッケージには入っていなかった。また、今回発表されたHUAWEI P20とHUAWEI P20 Pro向けには、デザイン性に優れた純正カバーがオプションとして発表されている。こうしたアクセサリー類も日本市場への展開を期待したいところだ。

これまでにない強力なカメラ性能

 今回のHUAWEI P20 Proで、もっとも注目される機能と言えば、やはり、カメラをおいて、他にないだろう。発表会のプレゼンテーションでもカメラの説明にもっとも多くの時間が割かれるだけでなく、壇上に立ったファーウェイのConsumer&BusinessグループCEOのリチャード・ユー氏自ら撮ったサンプル写真を披露し、「素人の私でもこれだけ撮れる」と語り、会場を大きく沸かせるほどだった。

 まず、HUAWEI P20 Proの背面には、3つのレンズがボディの長辺に沿って並んでいる。上部側から8MPセンサーにF2.4のレンズを組み合わせた望遠カメラ、40MPのRGBカラーイメージセンサーにF1.8のレンズを組み合わせたカメラ、20MPのモノクロイメージセンサーにF1.6のレンズを組み合わせたカメラによって構成される。

 40MPのRGBセンサーはセンサーサイズが1/1.7インチというコンパクトデジタルカメラを超えるレベルの仕様のものを採用する。従来のHUAWEI P10/P10 PlusやHUAWEI Mate 10 Proでは、カラーセンサーで得られた情報に、モノクロセンサーで得られたダイナミックレンジの広い明暗情報を組み合わせることで、高品質な写真の撮影を可能にしていたが、HUAWEI P20 Proでは40MPのRGBセンサーと20MPのモノクロセンサーの組み合わせで同様の手法を継承しつつ、8MPのセンサーで標準側の3倍に相当する望遠での撮影を可能にしている。望遠についてはさらに5倍のハイブリッドズームにも対応しており、光学3倍との組み合わせで、最大10倍のデジタルズームにも対応する。

 また、HUAWEI Mate 10 ProではAI対応チップセットの性能を活かし、被写体を自動的に認識させることで、最適な設定での撮影を可能にしていたが、HUAWEI P20 Proでは19カテゴリー、500以上のシナリオに対応し、多彩なシーンでの最適な撮影を実現する。手ぶれ補正についてもAIによる機械学習を活かしたAI手ぶれ補正を組み合わせる。

 撮影時の操作についてだが、まず、カメラを起動すると、解像度は10MPでの設定で起動する。この状態で被写体に端末を向けると、それぞれの被写体を自動的に認識して、最適な撮影モードに切り替わる。たとえば、人物に向ければ「ポートレート」、夜景に向ければ「夜間」、食事に向ければ「フード」に切り替わるといった具合いだ。しかもユーザーに切り替えたことを認識させるため、一瞬、画面効果を表示して、切り替えたモード名を表示する。このときの動きは速報の動画でも撮っているので、そちらも参照していただきたいが、従来のように、アイコンの表示が切り替わるだけのときよりもわかりやすい印象だ。

 また、ユーザー自身の操作によって、撮影モードを切り替えることもできる。画面中央下に表示されている「アパーチャ」「夜間」「ポートレート」「写真」「ビデオ」「プロ」「その他」をタップして切り替えるようになっており、標準では「写真」が選ばれている。「スロー」や「パノラマ」、「ウォーターマーク」などの撮影モードは「その他」に切り替えると、表示される。それぞれのモードは文字で表示されているため、視覚的にもわかりやすいが、ファインダー内を左右にフリックしても切り替わらないうえ、従来の同社製端末は画面左端から内側にスワイプして、設定画面を表示していたことを考えると、少し操作性が変わってしまい、戸惑う印象もある。

 撮影した写真については、実際のものをご覧いただくのがもっともわかりやすいが、発表会のプレゼンテーションでも強調されていたように、暗いところでの撮影に強い点がかなり際立っている。

 元々、スマートフォンはデジタルカメラに比べ、レンズやセンサーサイズなどで、スペック面で見劣りがするとされていたが、Leicaとの協業によるファーウェイ製端末のカメラをはじめ、各社のスマートフォンでは画像処理エンジンや複数のセンサーを組み合わせるなど、デジタルカメラとは違った手法で、高品質な写真を撮影できるようにしてkちあ。なかでもスマートフォンのカメラが室内など、少し暗いところでも撮影されることが多いことを考慮し、各社とも暗いところでの撮影に注力することが多く、筆者も各機種のレビュー記事では薄暗いバーで写真を撮るなど、各社の製品の仕上がりに注目してきた。

 今回は発表会後の夜、滞在中のパリのホテル付近で撮影したため、普段と少しシチュエーションが異なるが、夜の暗いパリの街並みも他機種にはないクッキリとした撮影ができた。いっしょに持ち歩いていたHUAWEI Mate 10 Pro、iPhone Xでも撮影し、比較してみたが、iPhone Xとの差は歴然としており、HUAWEI Mate 10 Proでぶれてしまうようなシーンでも建物などの全体像をしっかりと捉え、撮影ができていた。特に、約4~8秒程度の露出をする夜間モードは、これまでのスマートフォンにはなかった仕上がりの写真が撮影できるため、もっといろいろなシーンで撮りたいと思わせてしまうほどだった。最終的な出荷版の製品ではないため、やや色味のバランスが不自然になってしまうようなシーンもあったが、まだ試用時間は限られているものの、現時点でスマートフォンのカメラとしては「史上最強」と言って差し支えないレベルの仕上がりと言えそうだ。

 また、自撮りなどに利用するインカメラについては、24MPのイメージセンサーにF2.0のレンズを組み合わせる。人物の顔を検出して、3D画像処理を行なう機能やライティングをカスタマイズする機能なども搭載されており、セルフィーを一段と楽しみやすくしている。ファーウェイ製端末ではおなじみの「芸術的ボケ味」「ビューティ」などの機能も実装されている。ライトアップされた建物を背景に撮った写真でも人物の顔が暗くなってしまうようなこともなく、表情がわかるレベルのしっかりとした撮影ができている。

 全体的に見て、最大のセールスポイントであるカメラの性能は、現状でもっとも優れたスマートフォンのカメラという印象で、もっといろいろなシチュエーションでの撮影を試してみたいと思わせる仕上がりだ。今回の発表会でも「スマートフォンのカメラのブレイクスルー」という表現が使われていたが、その言葉に十分納得できるレベルのカメラ性能と言えるだろう。気になる点があるとすれば、従来機種からカメラ周りのユーザーインターフェイスが少し変更された点くらいだが、使っていく内に、機能のメニュー構成などを覚えていけば、十分に対応できるはずだ。

国内市場での発売が待ち遠しい一台

 今回、発表会後のタッチ&トライのコーナーに、本誌のインタビューなどでもおなじみのファーウェイの日本&韓国リージョンCEOの呉波氏が姿を見せ、P20シリーズを日本市場で発売することが伝えられた。HUAWEI P20 ProとHUAWEI P20のどちらが販売されるのかは明らかにされていないが、過去の経緯から考慮して、上位モデルのHUAWEI P20 Proは間違いなく、発売されると見ていいだろう。スペック的に見て、従来のP10シリーズよりも少し価格が高くなるかもしれないが、トリプルレンズカメラによるカメラ性能の高さはこれまでのスマートフォンにないものであり、それを楽しむ意味でも十分に対価を払う価値がある端末と言えるだろう。

 一方、今回はタッチ&トライでしか試すことができなかったHUAWEI PORSCHE DESIGN Mate RSは、過去に国内市場で同ブランドとのコラボモデルが発売されたことがなく、PORSCHE DESIGNとの調整なども必要になるため、国内への投入はやや望み薄と見ている。

 昨年11月のHUAWEI Mate 10 Proの発表では、AI対応チップセットの能力を活かし、新しいスマートフォンのカメラの方向性を打ち出していたが、今回のHUAWEI P20 Proを触ってみると、それは序章に過ぎず、AI対応チップセットによって、カメラ性能全体を向上させつつ、スマートフォンのポテンシャルを最大限に拡大しようとしていることを実感させてくれた。国内での発売時期はまだ未定だが、おそらく今年の夏商戦でもっとも注目される製品であることは確実であり、発売が待ち遠しい一台と言えるだろう。



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