2018年4月7日土曜日

[ITmedia News] なぜコインチェックを買収するのか マネックス松本社長が笑う理由

 「私自身、3年ほど前からコインチェックを利用し、仮想通貨を個人的に持っている。昨年は秋葉原に行ってグラフィックボードを買い、自作PCでマイニング(採掘)を始めたりと、仮想通貨に興味を持ってきた」――マネックスグループの松本大社長は笑う。同社は4月6日、コインチェックの買収を発表。巨額の仮想通貨「NEM」流出以降、正念場が続くコインチェックだが、6日の記者会見では松本社長のポジティブな発言が目立った。発言からは仮想通貨市場への期待に加え、コインチェックのブランド資産を高く評価していることが読み取れる。

photo マネックスグループの松本大社長(左)とコインチェックの和田晃一良社長=ニコニコ生放送より

マネックスグループが買収したワケ

 大手ネット証券として地位を築いてきたマネックスグループが、2014年創業のコインチェックを完全子会社化する背景には、仮想通貨市場の大幅な伸びがある。松本社長は「仮想通貨は大変重要な資産クラスだ。仮想通貨全体の時価総額が50兆円まで伸びたことは無視できない」と強調する。

 「歴史上採掘された総額が800兆円といわれる金であっても、例え『99.9999%』と刻印があっても偽物かもしれないし、盗まれるリスクもある。仮想通貨も真正性(しんしょうせい)や、盗難のリスクは同じ。金よりも軽く、支払い手段としても、資産をキープする手段としてもメジャーになっていくことは間違いない」

 ただ、コンプライアンスなど、既存の金融業界の枠組みの中で成長していくには「マネックスグループが手伝えることが多い」という。セキュリティ対策をはじめ、長く証券会社を運営してきたノウハウを生かす。「仮想通貨ビジネスの未来は強い、大きいものと信じている」(松本社長)

 その上で、松本社長は「コインチェックは、仮想通貨交換ビジネスでは世界的な先駆者であり、ブランドがある」と評価する。「(今回の買収は)日本語、英語のみならず、スペイン語、ポルトガル語、ロシア語でも報道された。過去マネックスではそんなことはなかった。コインチェックにはそれほどの知名度、ブランド、顧客基盤、技術、経営者がいる」

 松本社長は「リスクは管理できるが、ブランド価値や顧客基盤を作ることは到底できない」と買収意図を説明。コインチェックのブランドを維持しながら、マネックスグループが内部管理態勢の構築などをサポートする方針を示した。

「リスクがあるとは考えていない」

 買収額は36億円。コインチェックの収益力、資産からすると“やや安い”印象があり「予期せざるリスクがあるのではないか」との見方もあるが、松本社長は「リスクがあるとは考えていない。デューデリジェンス(投資先のリスクや価値を事前に調査すること)を行い、限定的であると認識している」と答えた。

 ただ、コインチェックは仮想通貨交換業者への登録を申請している「みなし業者」。流出事件後、金融庁の審査はより厳格化し、新規登録に時間がかかる可能性もある。

 松本社長は「交換業者登録をしても業務を継続していけるか、できなければ利益が出なくなるため、株式の買い手と売り手で見方に大きなギャップが出る」と説明。将来、買い手が定めた利益目標が達成された場合に、追加の額が売り手に支払われる――という手法「アーンアウト」でギャップを解決したという。そのため「見た目の数字(買収額)は小さく見えるが、コインチェックのリスクが大きい、収益力が低いと判断したわけではない」と、松本社長は説明している。

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