2018年4月4日水曜日

[ITmedia エンタープライズ] Alexa対Googleアシスタント、完成度が高いのは?


 前編(Computer Weekly日本語版 3月20日号掲載)では、Alexaスキルの開発に際しての考え方、進め方、そして注意点などのアドバイスを紹介した。

 後編では、音声アシスタント開発に不可欠となる要素、そしてAlexaとGoogleアシスタントの評価について解説する。

音声アシスタント開発に必要な要素

 スムーズな対話を実現するには、専門家のスキル(Alexaの、ではなく人間の技能)が必要だとイエペン氏は話す。「ユーザーインタフェースに設計者を配置するのと同様に、対話の設計者が必要だ。しかし、ユーザーに実際に試してもらうまで、音声アシスタントがどこまでうまく機能するかは判断できない」

 Wandaのテストにおいて、Unit 4はテスト担当者との会話の中で適切な返答ができなかった会話スニペットを収集している。「Wandaがユーザーの要望を理解できなかったときは、その会話を取り出してトレーニングにアップロードする」とイエペン氏は説明する。

 実際、Unit 4はWandaが正しい応答を返すようにトレーニングしている。これこそ機械学習だ。

 前出のElixirr Creativeのキングストン氏によれば、テストは時間のかかるプロセスで、音声のアナリティクス結果を反映させるのもさらに時間がかかるという。

 「人々がAlexaのスキルと対話する際の様子は、一様ではない。6〜7人のユーザーに対して同じテーマのテストを実施して、ようやくどうすれば効果的なのかが分かる、という調子だ」と同氏は付け加える。音声アナリティクスは例えば、人間がAlexaと対話する際にどこで間を置くか、Alexaと人間とのやりとりをより自然な会話に近づける方法を開発者が考える際に何が役立つのか、などを特定する場合に使える。

 音声アシスタントのよどみない会話フローを作成するのは容易ではない。音声アシスタントが何か有用な処理を試みなければならない場面ではなおさらだ。

 「音声体験はあと数年で、日常生活のほとんどの場面に取り入れられるようになるだろう。時間が節約できるという利点があるからだ」と、Made for Voice(企業向けの音声アシスタントソフトウェア企業)のマネージングディレクター、リー・マロン氏は話す。

 「こうした体験は、問題を迅速かつ簡潔に解決するという形でユーザーに応えなければならない。ある製品で、3単語から成る文で応答していた場面で、応答に2単語追加したところ、ユーザーの利用時間が20〜30%も減少した」

音声認識の分野での進歩

 GoogleもAmazonも今のところ、音声アシスタントへの注力を中止していない。それどころかAmazonは今や、ディスプレイも付いた「Echo Show」という端末も発売している。

 「最近登場した新種の端末は、音声での会話と画面を使った操作の両方が可能になってきている。つまり、以前は別々に存在していたものをシームレスな1つのフローに統合する傾向がある」と、前出のAccentureのケンドリュー氏は指摘する。

 視覚的なユーザーインタフェースと音声とを組み合わせることで、空港やショッピングセンターでインテリジェントなキオスクを提供するなど、顧客との対話に関する新たな機会が開拓される。

 本誌Computer Weeklyが本稿のために行った取材から、ある傾向が浮かび上がってきた。音声プラットフォームには2種類あり、それぞれの特徴は大きく異なる。

 「AmazonのAlexaは、Googleアシスタントと比べてユーザーの『旅』(操作感)が非常に異なる。Alexaの場合、ユーザーは各自の関心に合うスキルを『登録』する必要がある。われわれが本業で日常的に使用している記事要約スキルと同じようなものだ」と説明するのは、世界各地で地域情報誌を展開している企業Time Outのプロダクトマネジャー、ロブ・フリッカー氏だ。「一度登録すれば、その後はAlexaに『今日のニュースは何?』と聞けばいい。するとAlexaは、Time Out誌に掲載された、その都市でその日にやるべきことのトップ3を教えてくれる」

 一方、前出のGartnerのジャンプ氏は、GoogleアシスタントはAlexaよりも音声インタフェースとしての完成度が高いと考えている。GoogleアシスタントはGoogleアカウントとリンクしており、これを使ってカレンダーにアクセスできる。従ってGoogleアシスタントに依頼できる操作の数が多く、音声による操作を促すような設計にもなっている。これに対してAlexaは、「分かりません」という応答をする回数があまりに多いと同氏は主張する。

 Elixirr Creativeのキングストン氏もこの意見に同意する。「Googleアシスタントは非常に大量のデータを利用しているので、恐らく一歩抜きんでている」と同氏は話す。

 全てにおいて優勢な勝者は恐らく現れないので、Unit 4が示した通り、実業界においてはWindows 10のCortanaが利用可能な音声アシスタントの選択肢となるかもしれない。

 Computer Weeklyが取材で話を聞いた人々は、音声によるユーザーインタフェースに企業も注目すべきだと推奨していた。音声によるユーザーインタフェースは、クイックウイン(迅速に改善を実施し、早い段階で関係者に成果を見せること)ではなく、新たな販売経路でもない。圧倒的な魅力を備える真の音声インタフェースが世に出るまでには、開発やテストにまだまだ多くの時間や労力を要する。また、開発チームには対話設計の専門家が必要だが、今のところ社内にいるのはUI設計の専門家だ。

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