2018年3月9日金曜日

KDDIが仙台で災害対策訓練を実施、陸・海・空が揃った取り組みを披露


 KDDIは、宮城県仙台市で災害対策訓練を3月8日に実施し、その模様を関係者や報道陣に公開した。東日本大震災で大きな被害を受けた地域のひとつである仙台市で実施された訓練は、震災から7年を経て、その教訓から、陸・海・空の3つの領域に渡って、さまざまに進化してきた取り組みが披露された。

閉会時に挨拶するKDDI 理事 技術統括本部 運用本部長の奥山勝美氏
取材じ応じるKDDI 技術統括本部 運用本部 運用品質管理部長の大内良久氏、モバイル技術本部 次世代ネットワーク開発部 アクセスグループリーダーの黒澤葉子氏

 多くの企業や自治体と同様に、通信キャリアにとっても、インフラ設計や対策の面で東日本大震災は大きな教訓を残した。万全ではなかったのではないか、地震発生後ももっとできたことがあったのではないか、という後悔の念は、明言されずとも、関係者の挨拶や解説などからもにじみ出ているところだ。

陸・海・空が揃った取り組み

 通信インフラの災害対策の多くは、基地局の復旧という陸上からの対策が主体になっているが、津波などで大きな被害を受ける沿岸部への対策として、KDDIは船上基地局を考案、東日本大震災後に着々を実験を重ねて実用化にこぎつけている。

 今回公開された災害対策訓練ではさらに、船上基地局にドローン基地局を組み合わせ、海岸から山ひとつ向こうの内陸部に一時的に発生する“陸の孤島”への対策にも取り組む様子が公開された。通常、船上基地局からの電波は山で遮られてしまうが、船から飛ばしたドローンが空からこれを中継し、避難所を一時的にエリアにしたり、避難所のルーターに蓄積されたメッセージを回収したりする。

 訓練ではドローンから電波は発射されない予定で、また悪天候により、実証実験用のドローンが雨天に耐えられないことから実際の飛行は見送られたが、ドローン一式を背負って移動、船上基地局の設備からドローンを飛ばす手順が確認された。事前に同じ場所で撮影された映像が披露され、被災地の様子をいち早く高解像度の映像で記録できることも紹介された。

 東日本大震災の後は、通信キャリアと自衛隊が災害協定を締結したのも大きな特徴で、今回の訓練にも陸上自衛隊が参加、自衛隊のヘリコプターで通信復旧のための機材を搬送したり、悪路を越えるため自衛隊のトラックに機材と人員を積み替え、現地で臨時の基地局を設営する様子が披露された。

 UQコミュニケーションズとTOHKnetの車載基地局も訓練に参加した。こちらは、データ通信のトラフィックが次第に増加すると見込まれる比較的規模の大きい避難所に対して、通信容量を確保するという目的で、基地局車の移動や設置の訓練を行った。

5Gの活用も模索

 「5G」はまだ商用化前ということで、災害対策への活用は模索段階だが、避難所に設置したカメラで高精細なVR映像を撮影、通話を組み合わせ、リアルタイムで遠方にいる家族と会話ができるというデモを公開した。これらは、現時点では5G通信設備の内容が大掛かりになることから、被災直後というより、避難生活が長引いた場合などに、離れ離れになっている家族が安心できる取り組みという色合いが強いだろう。

 具体的には、被災地ではない遠方にいる家族が、VRヘッドセットを使い、避難している家族や避難所の様子を臨場感のある映像とともに確認できるというもので、訓練では実験用の免許を取得して28GHz帯の電波を実際に発射、VR用の高精細な映像をライブ配信していた。

 5Gの災害対策での活用は、IoTセンサーなども検討されており、災害の発生の兆候を察知したり、発生後の被害の拡大を防ぐ目的で、多数配置されたセンサーを活用するといったことが考えられるという。

イオンとの災害対策での連携を継続

 KDDIは自衛隊以外にも民間企業同士の連携を図っており、そのひとつがイオンとの取り組み。過去にはイオンの災害対策訓練にKDDIが参加したこともあったが、今回のKDDIの訓練にはイオンが参加、イオンが持つバルーンシェルターを膨らませて設置、そこを大規模な避難所と見立ててトラフィック対策の基地局車を配置するなどした。イオン銀行のATMを搭載した車両も展示された。



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