2018年3月26日月曜日

[ITmedia エンタープライズ] 昔ながらの巨大プロジェクトを尻目に、銀行の「勘定系クラウド」が動き出す

日本ユニシスと日本マイクロソフトの共同プロジェクト

 最も信頼性が求められる銀行の勘定系システムに、パブリッククラウドが適用される日は来るのか――。筆者はまだ先の話かと思っていたが、ついに具体的なプロジェクトが動き出した。

 日本ユニシスと日本マイクロソフトが3月23日、銀行の勘定系システムの稼働基盤にパブリッククラウドを適用する共同プロジェクトを2018年4月に開始すると発表した。これが実現すれば、パブリッククラウド上で銀行の勘定系システムが稼働する国内初の事例となる。

 日本ユニシスは、2007年5月にWindows ServerやSQL Serverをベースとしたオープン勘定系システム「BankVision」を開発しており、これまでに地方銀行10行(山梨中央銀行、北國銀行、スルガ銀行、大垣共立銀行、百五銀行、紀陽銀行、筑邦銀行、佐賀銀行、十八銀行、鹿児島銀行)に導入された実績を持つ。

 今回の取り組みでは、BankVisionの稼働基盤にパブリッククラウド基盤「Microsoft Azure」を採用する。日本ユニシスは2016年度から日本マイクロソフトとAzure上でのBankVisionの動作検証を進めてきたが、ここにきて米MicrosoftのAzureエンジニアリング部門との連携や国内データセンター利用の体制などが整ったことから、「BankVision on Azure」実現へ向けた共同プロジェクトを立ち上げる運びとなった。

 共同プロジェクトでは具体的に、勘定系システムに求められるサポートレベルに基づくサービス内容の検討や、Azureの新規リリース機能の確認およびテスト、これまでの動作検証で明らかになった技術的課題への対処、Azure上の各種機能を利用した新サービスの検討などを進める。

 両社ではBankVision on Azureを「新時代の金融サービス向けプラットフォーム」と位置付け、堅牢性を担保しながら、オープンAPI基盤「Resonatex」を利用した異業種やFintech企業などとの連携による新たな金融サービスを実現。さらに、サービス単位で機能をモジュール化し、金融サービスの状況変化に応じた戦略を機能の選択で実現できるようにする構えだ。(図1)

Photo 図1 BankVision on Azureがもたらすベネフィット(出典:日本ユニシスと日本マイクロソフトの発表資料)

 今後は共同プロジェクトを通じて、BankVisionを利用する銀行の基盤更改時期などに合わせてAzure化の提案を順次進めていく方針。2020年前後に更改時期を迎えるところが最初のユーザーになりそうだ。

 さらに両社では、BankVision on AzureやResonatexを活用して、銀行機能を異業種やFintech企業などにサービス提供する「BaaS(Bank as a Service)」について、各銀行の強力を得ながら事業化の検討を進め、金融機関の新たな収益機会の創出や、業種業態の垣根を越えたビジネスエコシステムによる新たな価値創造を目指していくとしている。

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