2018年3月15日木曜日

[ITmedia LifeStyle] 日本はアピール不足? 「MWC 2018」で見つけた欧州の最新コネクテッドカーたち

 去る2月下旬にスペイン、バルセロナで世界最大級の通信関連展示会「Mobile World Congress 2018」が開催された。早ければ来年2019年にも商用サービスがスタートするといわれている、次世代の高速移動通信システム「5G」に関連する展示が今年は特に多く並んだ。モバイル端末にホームネットワーク、スマートシティなど5Gを取り巻く次世代の技術やサービスが集まるMWCの会場で、最新のコネクテッドカーと関連サービスについて取材した。

今年の「Mobile World Congress」は5Gやコネクテッドカー関連の出展が例年にも増して目立った

2019年の商用化に向け準備が進む「5G」の技術

 5Gの通信技術には大きく分けて28GHz帯など高周波帯を使う「ミリ波帯」と、6GHz帯以下の低周波数帯をメインにした「サブ6GHz帯」の2種類がある。サブ6GHz帯の特性は4G LTE以前の通信方式との高い後方互換性にあるとされているが、来たるべき5Gの時代に膨大な通信トラフィックを安定的にさばくために必要なキャパシティはミリ波帯の広大なリソースを活かすことで実現できるとする向きもある。そのため、電波の指向性コントロールや通信エリアのカバーなどの面でより難易度が高いとされているミリ波帯をベースにした5G技術の進展にも期待が寄せられている。

 インテルは28GHz帯のミリ波による通信に対応した車載用アンテナ搭載のコネクテッドカーを試作。5Gモビリティ通信の実証実験に成功したことを今年のMWCのブースであらためて紹介した。

インテルのブースにはNTTドコモやトヨタと共同開発した5Gコネクテッドカーが展示され、これまでに行った移動体への5Gネットワークを介した4K動画、マップデータのリアルタイム伝送など実証実験の結果をアピールした

 実験の内容は30km/hの速度で移動するコネクテッドカーに、リアルタイムの4K動画を最大1Gbpsのデータ通信速度で伝送しながらライブ映像配信を行うというもの。同実験には日本のNTTドコモやトヨタ自動車、エリクソンなどの企業も参加している。日本でも17年11月に、お台場で複数の5G基地局にまたがる走行実験に成功したことがプレスリリースで伝えられており、また韓国で開催された冬季オリンピックに合わせて、KT(Korea Telecom)の5Gネットワークを利用して、同様に5G対応のコネクテッドカーによる実験を成功させている。

後部トランクルームに積載された5Gネットワーク通信のためのシステム。2019年から2020年ごろを目処にこれをコンパクトに搭載できるサイズ感へ落とし込んでいくという

 今後は車載用アンテナやレシーバーモジュールの小型化・計量化を図りながら商用に向けた取り組みを加速していく段階だ。インテルでは2020年に向けてNTTドコモとトヨタ自動車とともに、東京オリンピックの現場で5G対応のコネクテッドカーを走らせるための技術開発についてパートナーシップを強化することを発表している。

5G通信による安定したスループットを実現しながら4K動画ストリーミングの受信を実現していることを示す展示
専用の車載アンテナを使うことで大容量データの安定した送受信を実現する

 今年クアルコムがMWCに出展したブースも「5G」一色に染まっていた。同社ではミリ波帯とサブ6GHz帯の両方の技術に関連した取り組みが着実に前へ進んでいることを強くアピールした。

クアルコムはブースに5Gスマホのプロトタイプを出展。難易度は高いが、5Gの高速・大容量通信のメリットが高いといわれるミリ波帯の通信に対応するプラットフォームの開発にこだわる
ブースでは5G対応のモデムチップ「X50」の通信性能を紹介。送信アンテナとモデムの間に手をかざすと通信が途切れるので、デモンストレーションながら実際に5G通信を実現できていることが分かる

 MWCの開催前に米サンフランシスコで実施した試験では、ミリ波帯に対応する5Gモデムを現在稼働している既存の4Gの基地局にセットして、エリアカバーが弱点とされている5Gの通信を使いながら、屋外トラフィックの約65%で良好なスループットを実現できることを証明したという。ミリ波帯の5G通信にトラフィックを分散できれば、これに伴って4G LTEエリアのスループット向上にも良い効果がもたらされるだろうと、クアルコムの担当者はコメントしている。またドイツのフランクフルトではサブ6GHz帯の通信システムをベースにしたフィールドテストを行い、同じく望ましい結果がえられているという。

サンフランシスコで4G LTEの基地局施設に5Gの通信システムを設置してエリア品質の試験を実施。65%のエリアをミリ波帯の通信でカバーできたことから、既存の4G LTEによるカバーと併存することにより、互いのスループットの品質を補完しあうような運用方法も見えてきた

 クアルコムでは今、エリクソンにノキア、ファーウェイに代表される基地局インフラのベンダーとの間で5G対応モデムチップセットの相互接続データテスト(IoDT:Interoperability Development Test)を精力的に行っている。テストを経て次々と浮き彫りになる課題を早急につぶしながら5G通信のバックヤードが整備されてくると、次にはいよいよ5G対応の基地局設備やモバイル端末の開発が進められることになる。

クアルコムではインフラベンダーとともに次世代5G通信の環境を整備するための相互接続データテスト(IoDT:Interoperability Development Test)をミリ波帯、サブ6GHz帯ともに精力的に行っている

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